Island Life

< ピアノレッスン47回目 / 1周年 | 音楽とプログラム >

2012/05/03

フリーランス、アベラビリティ、20%ルール

気がついたらフリーランスになって10年経ってた。 やれるところまでやってみてダメだったら職探せばいいや、 と思っていたけど案外なんとかなっている。とはいえそれは振り返って言えることで、 先を見れば相変わらず3ヵ月先がどうなってるかはわからない。 でもまあ、「人生はそういうもの」だという感覚にすっかり馴染んでしまっていて、 むしろ今は長期雇用のような長いコミットメントをすることの方が怖いかもしれない。

フリーになる前の一番の不安は「継続して仕事があるのか」ということだった。 で、10年やってみてわかったのは、この不安は無くならない ってこと。 だから、不安と共存する方法を身につけ、目が悪い方に出た時の準備をしておくしかない。

仕事を請け続けるにあたっての十分条件は多分無いけれど、必要条件はいくつかある。 その中で、あまりに自明で見落としがちな(私自身、フリーになるまで気づかなかった) 必要条件は、「availableであること」だ。仕事が目の前に転がってきた時に 「自分ならこのくらい(時間/費用)でできます」と即答できる状態でないと、 その仕事は逃げていってしまう。 (availabilityについては前にも書いた: 『reliabilityとavailability』)

もちろんスケジュールの問題で請けられないのは仕方ないけれど、 ある仕事に必要とされるスキルや知識を、その仕事の話を聞いてからえっちら勉強し始めるのでは遅い。 「何となくこういう方向のプロジェクトを考えているんだけど、良いアイディア無い?」と 話を振られた時に提案できるネタを持ってるかどうかでも、 仕事につながる率は大きく変わってくる。 当たり前の話ではあるけれど、常に準備を怠るべからず、ということだ。

で、仕事の切れ目を長くしないためには、ある仕事をしている間にも 次の仕事に向けた準備や種まきを続ける必要がある。仕事を請けたからといって 100%それにリソースをつぎ込んでしまうのは、次に向けた準備が出来ないという点では極めてリスクが高い。

これは伝統的な「精一杯仕事をすることが次につながる」という価値観に反するように 聞こえるかもしれないけれど、100%リソースをつぎ込むことだけが「精一杯の仕事」ではない。 コミットした範囲で、確実に成果を出すことが重要なのだ。 (Cf. 『本気』)

もちろん、100%で取り組む価値のある仕事というのもあるから、 ケースバイケースで判断するべきだけど。そういう特殊ケースを除いた 定常運転の時は、持ち時間の20%〜25%くらいを、今取りかかっている仕事以外の、 次の仕事につながりそうな準備に使うべきだろうと感じている。 (実際、hourly rateで請求書を書いてくれ、と言われた場合、だいたい30h/weekとか20h/weekにしてる。 自分の準備のための25%にお代を頂くわけにはいかない)。

この事情は企業であっても同じはずだと思う。 変化の速い業界では会社のリソースの一定割合を目先の仕事以外に振り分けて、 次への種まきとしておかなければならないだろう。そして、次に何が来るか 予測し難い業界であればさらに、なるべくオプションを広げておきたいはずだ。

そう考えれば、 業務時間の2割はアサインされたタスク以外のことをする、という Googleの20%ルールはとても理にかなっている。 会社が2割の社員を指名して種まきをやらせるかわりに、 それを開発職全員に分散させているだけだからだ。 より大きなdiversityを得るという意味ではむしろ分散させた方がいい。

20%ルールを、社員のモチベーションを引き出すためと解釈している意見も 見たことがあるけれど、それよりはむしろ企業が生き残るためのリアルな戦術なのだと思う。

Tags: Career, 仕事

Past comment(s)

某学生 (2012/05/10 05:40:58):

今アメリカに大学院留学しています。教授の下で働くので個人事業主とは状況は違うものの、たしかに同じようなことをときどき考えます。ラボの中で何か共同で研究するときに自分自身のavailabilityは結構意識せざるを得ません。自分にしか出来ないことも少しはあるのですが、自分の生き残るために、いかにフレキシブルに自分を相手に合わせるか、という観点は忘れたことがありません(悪く言えば、それを忘れたら相手にされない気すらする。)

あまり相手に使われることばかり考えていると若干卑屈かなと思うこともありますが。願わくは自分にしかできないことがたくさんあって、主体的に働く相手を選べる立場になればいいんでしょうけど。渡米2年目の下っ端ではさすがにそんな贅沢なことは言えないかと思い、とりあえずは使ってもらえるだけでいいと思ってやってきました。

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