Island Life

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2007/06/22

ヘッドハンティング、エージェント、アウトソーシングに関する誤解

ヘッドハンティングについてあなたが注意すべきたった一つのこと

ここで、あなたは、そういう事情を知らないものだから、「ヘッドハンティングしてくるぐらいこの会社は俺のことを望んでいる」と勘違いするだろう。あなたは、「この会社に転職すれば素晴らしい待遇が待っている」と淡い期待を寄せる知れない。しかし、それは全く違うのである。社長は入社後、あなたが即座に成果を出せなければ容赦なく首を切る。

どんどん人を入れるために人事をアウトソーシングしているのであって、社長としては、自分で人を呼ぶ苦労をしてないので、役に立たなければ即座に切ってもそれほど痛くはないのである。つまり、あなたは使い捨てなのである。数ヶ月後に首を切られて「ヘッドハンティングされたはずなのに?」と疑問を持ちながらあなたはその会社を去ることになる。

元エントリは、こういう質の悪い業者や場当たり的な求人会社があるから気をつけようって 話で、それについては異存はない。けれど、こういうのがはびこる背景に、 「ヘッドハンティング」だとか「エージェント」が普通の人によく理解されてないって ことはありそうだ。

エージェントというのは特定の目的について依頼人の代理として働き、 普通は目的の達成時に成果報酬を得る(目的が達成されなければ報酬はない)。 いわゆるヘッドハンティングを行う業者、リクルーティングエージェントとか リクルーティングコンサルタントとかいうのは、求人を行う企業の代理人として働く。 成果報酬は、雇用契約が成立した時に、その雇用者の年俸の2割とか3割とか 言われている(噂では。中の人ではないので本当のところは知らない。 でも、年俸基準の成功報酬だってことは聞けば教えてくれる)。 求人企業にとっては、それだけ払っても自前で探すよりコストが 安くなればOKなわけで、求人企業とエージェントはともに ベネフィット/コストを最大化してwin-winになるように動いてるわけ。

だから、求人企業もエージェントもごくまっとうな仕事をしているケースにおいても、 「ヘッドハンティングしてくるぐらいこの会社は俺のことを望んでいる」 と思うのは根本的に勘違い。単にエージェント経由でピンポイントで 声をかけた方がコストがかからないってだけの話。 (時には求人企業から指名が入るケースは あるだろうけど、普通は違う。) 提示された条件を吟味して、自分にとっても 話に乗ることがwinになるかどうかを冷静に判断することが当然求められる。 要するにそれは、求人企業と転職者が対等な立場で行うビジネス上の判断なわけだ。 「素晴らしい待遇」を望むならちゃんと雇用契約に入れてもらうよう交渉しないと。

あと、普通のリクルーティングエージェントはフィルタリングはするけど ちゃんとした採用選考は求人企業がやるのが一般的。なので元記事の 「自分で人選までしてしまうと採用した人が成果が出せなかったときに 言い逃れができないので」というのはよくわからない。ある人を採用するか どうかという決断は企業にとって非常に重要で、それはそもそも代理人の 仕事ではない。

それと、元エントリだけ読んでると「人事のアウトソーシング」についても 誤解が広まりそうなので補足。まともな「人事のアウトソーシング」業者というのも あって、普通はそういう業者は雇用契約だとか雇用者の保険の手続き、 給与支払い、雇用関係の遵法に必要な諸々の雑用等をやってくれる。 リクルーティングについても、求人広告の準備とかはやってくれる。 でも、実際に人を引っ張ってくるのは別。 こういう事務処理は基本的に定額の契約であって、成功報酬で動く エージェントとは本来別の業態。

元記事からすると、世の中には定額のHR outsourcingでありながら 採用まで面倒見る業者、というのがいるのかもしれぬ。それだと構造的に 使い捨ての人集め業者が入り込んでくるのは納得できる。ただ、そうではない、 ごくまともな業者であったとしても、ヘッドハンティングの話が来たからって 「請われて迎えられる」ってことじゃないんだよってことで。

(2007/06/24 13:11:35 PDT追記): yaneuraoさんにコメントいただきました。 「年俸基準の成果報酬」だけが契約形態ではなく、いろんな形態があるということ、 そして元エントリは基本的に定額制の契約を想定しているとのことです。 こちらのエントリはあくまで私の知る範囲の世界の話なので、 成果報酬でない業者を「まともでない」というふうに書いてしまいましたが、 そうとは限らないということで。

ただ、私も役者としてエージェントと 契約しており、成果報酬であることでビジネスライクにwin-winの関係が築ける というシステムはなかなか良くできてるなあと感心しているので、 「エージェント」と聞いて何か大げさなものを想像するのではなく、 ミクロなレベルでも効率の良いシステムなんだという認知が広まっても いいのに、という背景もあってこのメモを書きました。

あと、企業とエージェントの契約形態にかかわらず、 結論である「ヘッドハンティングと聞いて浮かれるなかれ」というのは同じです。

Tag: Career