Island Life

< オープンソースの罠 | 仕組みを維持すること >

2009/06/21

ソフトウェア開発以外の分野でのオープンソース?

( essaさんに触発されてちょっとがんばってみる)

オープンソースソフトウェア(OSS)界隈では、 たくさんの人が自発的に協力し合って今までにないスピードで 営利企業が成し得なかったことをやっちゃう、みたいなすごいことが起きてて、 だからソフトウェア開発以外にもオープンソース的手法を使ってそういう「いいこと」を 起こそうって考える人たちがいる。

そういう人たちに、ひとつだけ注意して欲しいのは、目に見える手法---たとえば プロセスをオープンにするとか、誰でも参加できるようにしてネットで広く協力者を 募るとか---だけをコピーしてもうまくいくとは限らないよ、ということ。

OSS界隈で「いいこと」がたくさん起きたのは、 オープンソースの中に、ハッカーという人種の気質をうまく利用して ソフトウェア開発という目的に向けて自発的協力を引き出す仕組みが内包されていたからだ。 (詳しく知りたい人はノウアスフィアの開墾を読むといい)。

この仕組みは、目に見える明文化された方針よりもずっとずっと強固に、 ソフトウェア開発に特有の性質や文化と結びついている (たとえば、ソースがあれば実際に動作するプログラムを誰でも作れること、 不満があれば自分で改良できること、 プログラムが動作するかしないかは客観的に判定できること、 全体としてのゴールはより良いプログラムを手にすること、などだ)。

だから、こういう性質を持たない分野に、OSS界隈で使われている 手法をそのまま適用しても、うまく動く保証はない。 たまたまうまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるだろう。

他の分野で、OSS界で起きてるのと同様な現象を起こしたかったら、 真似るべきはオープンソースソフトウェア開発の表面的な手法じゃない。 対象分野における参加者の性質と、成し遂げたいゴールを分析して、 OSSがやったのとパラレルになる、その分野特有の「仕組み」を考えることだ。 そして、その仕組みを実際に動かしてみることだ。 思うように動かなかったとしても、それを環境のせいにしちゃいけない。 その環境で「いいこと」が起きるようにできていない「仕組み」の方に 問題があるのだから、うまく動くまで、問題を直して何度でも挑戦しよう。

たぶん、そうやって出来上がったものが、ソフトウェア界における オープンソースの遺伝子を継いだ、別の分野でのオープンソース的な何かに なるんじゃないかと思う。

Tags: OpenSource, ものつくり