2011/03/10
好きな仕事の95%
好きなことを仕事にする、という言葉には甘美な響きがあるけれど。
Auditions, Justice (And Other Ruminations) | The Professional Actor
When you see an actor ‘working all the time’ – it’s usually means that actor is a good businessperson. You know – good at sales, following up, customer relations, getting repeat business, marketing … well, it’s a long list.
Being a good actor is really not enough to build a career. Talented or not, you’ve got to be good at the ‘not much fun’ parts – if you want to exercise your artistic rights.
選挙権の行使には陪審員義務がついてくるように、 本当にやりたいこと、好きなことをするためには、 どっちかというとやりたくない、楽しくないことも 上手くこなさなければならない、って話。 引用したのは役者についての話だけれど、 素晴らしいものが作れた、やってて良かったと思えるようなことは5%くらいで、 オーディションに始まってウマの合わないスタッフとの付き合いから営業活動まで、 not so fun partsが残りの95%。 でもそれを避けることはできない、ってなことが書いてある。 あなたがどんなに才能溢れる役者であっても、その能力を行使できる 5%へ開くドアは、この95%の先にしか無いからだ。
これはどんな職業にも当てはまるよなあ。
私はLisp/Schemeでプログラムを書いて生計を立てていて、 プログラミング好き、Lisp好きな人間としては理想的な環境だ。 これで文句を言ったらバチが当たるけれど、 本音を言えば仕事のうち95%は、ひたすら忍耐が必要な、 出来れば他の人にやってもらえたらなあ、と思う作業で占められている。
でもそれを他人にやってもらうわけにはいかない。本当に面白い5%に到達できるのは、 それまでの面倒な道を歩いた人だけだから。(あ、これはあくまで本業に関係する作業の話。 税務申告処理とか、はっきり外部に委託できる業務は外に出しちゃえばいいんだけど。)
こういう作業もまた楽しい、って言う人はいるかもしれないけれど。 「この先に素晴らしい世界への扉があるかもしれない」という展望が全く無かったとしても その作業が続けられるか、ってことを考えてみたら判断はつくと思う。
この95%が避けられないのは、それが仕事の原理だからだろう。 仕事というのは、ある人が、「これはお金を払ってでも他の人にやって欲しい」と 思うことを引き受けることだからだ。 自分のやりたいことかどうかというのは、基本的に関係がない。
それを自分のやりたいことにどうしてもつなげたければ、 誰もが「面倒だな他の人に任せたいな」と思っているようなことを引き受けて 自分のやりたい方向へ誘導してゆくしかない。 誰もがやりたがることであれば、発注側にとって仕事を出す先はよりどりみどりで、 請け側の裁量は際限無く減ってゆくわけだから。
一応、別の道として、「それを出来るのは自分しかいない」っていう技を身につける、 という方法もあるけれど。 その「出来ること」が需要にマッチしなければ仕事にはならないので、リスキーな賭けになる。 一時的に需要が高まったとしてもそれが続くとは限らない。 それに比べれば、「人が面倒だと思うことを引き受けて、自分のやりたいことにつなげてく」 方法は、需要が移り変わっても適応してゆける。
書いてみると、仕事してる人なら誰でもわかってるようなことしか言ってないな。 まあ、普段から思ってることを別業界のブログで読んだので思わず書いてみたってことで。
Tag: Career
Maskit (2011/03/11 04:50:28):
shiro (2011/03/11 06:24:08):