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2013/06/18

Bruce Brubaker氏によるレッスン、メモ

Scriabin: Sonata No.4 Op.30

一回通して弾いて、その後、ダメ出しを受けながら部分部分を見ていった。1時間があっという間。

全体について

  • 聴く人のことを考えよう。弾いてるあなたはすべての音を分かっているだろうけれど、 整理しないでただ出したら、聴く人はどこを聴けばいいのかわからない。 何を聴いてほしいかということを考えて曲を「組み立てる」んだ。
  • Scriabinはこの曲でたくさん「息の長い」メロディを書いている。その大きな線を きちんとつなぐこと。また、解決がうんと後に伸ばされたり (解決されないことさえある)、 フレーズの導入部でわざと拍がずらしてあったりするからその曖昧さ、不安定さを考える。 ベートーベンのようにぴったりくっきり弾いてはいけない。

第1楽章

  • 6/8拍子。符点四分音符ごと、2拍/小節のリズムを常にAndanteで感じること。 ルバートしても4連符、5連符が出てきてもこの2拍のリズムをちゃんと感じていればいいけれど、 それが感じられなくなるととても聴き辛くなる。
  • 冒頭、上声のメロディラインの書かれ方に注目。単に D♯--D♯G♯--D♯E♯C♯--- という 単旋律ではなく、D♯の声部にG♯が加わる、C♯が加わる…というふうに書かれている。 これはKlangforbenmelodieと 呼ばれる。(ああ、オーケストラでビオラがだーって弾いてそこに第2バイオリンがふわーと重なって 第1バイオリンがとわーっと来る感じですか?) そうそう。それぞれの声部が聞こえるように。

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  • 左手の和声は移り変わってるけど、機能としては4小節目の最後に一瞬解決するまでは ずっと一緒だよね。だから和声の切り替わりをはっきり弾くんじゃなくて、ペダルをうまく 使って融け合わせるように。映画で、場面と場面の間がふわっと切り替わるのがあるだろ? (クロスフェードですか?)そうそう。それそれ。 ペダルを踏みかえるタイミングを遅くするといい。 ショパンだとこう(実演)だろう? それをこう(実演)する。
  • 5小節目の手前で一旦ペダルを完全に切ったけど、同じ理由で、そこは切らないで続けるべきだな。 4小節目ラストの和音で一回踏みかえる。そのまま分散和音を弾いて、左のF♯と右のA♯を弾いた後で また踏みかえる。左の下のDナチュラルは抑えたままに出来る? 出来るね。よし。
  • 7小節目のD♯からFダブルシャープ、ここもD♯を残すように書いてあるね。 あと、ここの休符でもペダル切らないで。
  • 5連符にポルタートがついてる。これは喋るときに音節を強調する感じ。シラブルをはっきりさせて 喋ってごらん。そうそう、その感じ。
  • 18小節めから33小節目までの盛り上がり、リズムが曖昧になるので、2拍子のAndanteを よく感じて。左手の4連符は伴奏なんだからそんなにはっきり聴かせなくてもいい。
  • 43小節めからの右手の細かい音符。こういうのを、各ポジションで最適の位置で 弾こうとすると、親指小指が黒鍵に乗る時は手が奥に、白鍵に乗る時は手前に来るよね。 続けて弾くと奥に行ったり手前に来たり、手の移動のラインががたがたする。 どう弾いても望む音が出るならいいんだけど、あまり手を前後させるのは効率が良くないね。 黒鍵に乗る箇所ではぎりぎり手前の方で、白鍵に乗る箇所では普通よりも奥の方で、 手が単に平行移動すれば良いように弾くといい。
    • (同じアドバイスを第2楽章102小節目からの左手、同じく132小節目からの左手でも受けた。 これを家に帰ってやってみたらおそろしくなめらかに手が動いてびっくりした。)

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  • 50小節目末尾から。最初のFダブルシャープや51小節目冒頭のD♯は伴奏だからそんなに 強く弾かない。特にD♯の方はバスのD♯にそっと添える感じで、聞こえるか聞こえないかぐらいでいい。 メロディは51小節2拍目のB♯から。

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  • 59小節目からのpoco cresc. ed accel. これはattaccaでそのまま第2楽章に 突入するんで、第1楽章の終わりまでに第2楽章冒頭の速度に達していること。

第2楽章

  • 聴かせるメロディのラインをはっきりさせる。
    • 頭のD♯↑B、3拍目のD♯↓B、どちらもD♯にアクセントを置いて、Bは微妙に抜く感じ。 君はBの方にアクセントを置いてる。そう弾いちゃうピアニストも多いんだけどね。 そう弾くと聴いてる方が混乱する。おっと、Bをスタッカートにしちゃだめだよ。
    • 2小節目、メロディはA-----G♯だ。緊張-解決のパターンだからAを強く、 G♯を抜く感じで。途中に入る和音は全部伴奏だからメロディの邪魔にならない大きさで。

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  • 第1楽章冒頭のテーマは8小節あるけど、最初の4小節はメロディが全部強拍を外してて、 5小節め冒頭から始めて強拍に乗っかる伝統的なメロディになる。 第2楽章でも、1小節は軽く飛び回ってて、2小節目でone-two-three-four、この拍に乗るだろ。 一種のアウフタクトと考えてもいい。
  • 5小節めから、メロディは上声の「タータタラッタータ」だ。他の声部はそんなに 大きくしなくていいんじゃないかな。
  • 6小節めのメロディG♯-A、これも緊張-解決だからAの方をわずかに抜く。君はAが強すぎる。
  • 21小節めから。君の中声部は良く聞こえたけど、ここは上声部と中声部のデュエットで 聴かせたいね。ソプラノとテノールだ。
  • 30小節め。fとpの対比をはっきり。でもフォルテのF♯ majorの和音はスタッカートじゃないよ。

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  • 48小節めからの展開部。旋律が積み重なってゆく、その階層をうまく聴かせたい。
    • バスのC♯-F-F♯、この旋律も重要だから失わないように。
    • 49、50小節目の左手はいろいろ弾いてるけど、大事なのは旋律を構成している 音だけだ。他のは重要じゃない。聞こえるか聞こえないかぐらいでいい。
    • 51小節めは、メロディとして小節頭のA♯で完結してる。後は飾りなんで、 うわーっと盛り上げさえすれば、個々の音はそんなにはっきり聴かせなくていい。 編集者によるペダルも踏みっぱなしになってるだろう。それが正解だと思うな。

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  • 57小節め、右手のメロディはE-E♯だ。装飾で途切れてるけど、聴き手にはつながって聞こえるように。
  • 続く58小節めからも、メロディのラインB-F♯-F♯-E-E-D-C♯-Dが一本に聞こえるように。 上と下のは飾りだから、そっちが大きくなると上に飛んだり下に飛んだりしちゃう。
  • 66小節めからの、第1楽章のテーマが回帰するところ。
    • メロディはfffだ。思い切っていけ。
    • ペダルは2小節ごとの単位で踏み続ける (途中で踏みかえない)。 それによってバスを保持する。メロディ単独ではなく、 バスとメロディのぶつかり合いによって力強さが産まれる。

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  • 74小節めから、左手のメロディが埋もれがちになるので思い切って前に出して。
  • 82小節めからの再現部。83小節め3,4拍の右手はテーマ冒頭と同じ音型だけど、 A♯-F♯ってメロディがあるわけじゃない。テーマ自体はA♯-----G♯ってメロディで変わってなくて、 あとは飾り。
  • 94小節めから。複雑なパターンだけど、ここは左手のモチーフを出して、右手の細かい音は ぼかしてみようか。
  • 102小節めからの左手の奏法は第1楽章参照。
  • 130小節めから、繰り替えされる「タータタラッタータ」をはっきり丁寧に。

Tag: Piano

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