Island Life

< Self-callの書き換え | 或るプログラマの遍歴、的な >

2016/06/29

AIPF2016

先週1週間にわたってAloha International Piano Festivalが開催され、 今年もAmateur Academyに参加してきた。また目から鱗がぽろぽろと。 (Competitionは去年優勝したのでineligible)。

Amateur concertで演奏する12分のプログラムに絞って練習してて、 レッスンもその曲目で受けた。今回は仕上げるってことに挑戦してみようと、 以前の先生とやった曲を再びさらっていったのだけれど、いやはや、 まともに演奏できるようになるまでの道のりは果てしなく遠い。 (アマチュアでない)本プログラム参加のちびっ子達は堂々と演奏してて 実に素晴らしいことであるなあ。

それでも、何ヶ月か自分なりにさらっていったのをプロに見てもらえるという 経験は貴重な機会だ。自分で気づいて改善できるところは全部やった、 という状態で持っていけば、指摘されることは全て自分に今まで見えていなかったこと だから、世界が広がる。 毎週のレッスンもできれば再開したいのだけれど、週1の場合、なかなか 自分でできることを全てやるってとこまでいけないので、惰性になってしまう きらいはある (もちろんん先生の方針にもよるだろうけど)。

  • Jon Nakamatsu氏によるレッスン: バッハの平均律II巻、D major。 Jon氏にはAIPF2013以来毎年見てもらっているがバッハは初めて。
    • "Bach is a lot freer than people think." バロックの時代はバロックの時代なりに、演奏者による主観的な表現があったはず。きっちり楽譜どおりに弾くことをバッハは必ずしも意図してなかっただろう。曲の中から自分の表現したいものを選んで、それを明確にするためになら、テンポの揺れ、ダイナミクス、アーティキュレーション、どの声部を前に出すか、など演奏者ごとにさまざまな解釈があり得る。
    • This (piano) is not the instrument Bach had. 小さめの部屋でハープシコードで演奏するのと、大きなホールでピアノで弾くのは効果が違う。むしろ別の楽器へのtranscriptionと考えるといいかも。音楽のエッセンスをピアノという楽器でどう表現するかを工夫する。ハープシコードの真似をしようと思っても、乾いてつまらない響きになるだけ。例えばホールの反響が欲しい音に対して不足してるなと思ったら、浅くペダルを使ってみてもいい。ノンレガートは短くしすぎるとピアノではドライになりすぎる---オルガンの音を意識してみるのもいい。
    • プレリュードはそこそこ速いが、急いでいるように聞こえてしまってはまずい。むしろリラックスしながら身体がビートに乗ってくるような曲想だ。だからメトロノーム使う練習でも、メトロノームの先を行くのではなく、一緒かむしろ後をついてゆく程度にリラックスするといい。
  • Anderson & Roe、マスタークラス: カプースチン Op40-7 Intermezzo
    • これは大惨事だった。Op40-7は昔録音したこともあったし、以前の先生の発表会で弾いたこともあるのでそうそう大きく崩れることはないだろうとたかをくくっていたのだけれど、いきなり冒頭近くから何弾いてるんだか自分でわからなくなる「ここはどこ?」状態に。指が思うように動かないうえにどの音を出すんだか思い出せない。筋肉の記憶もあやふやになって、だいたいこのへんの音、くらいの感覚で七転八倒しながらどうにか最後までたどり着く。
    • 先生からの指摘は主に2点。
      • リズム - 確かにジャズではアップビートの方を強調するが、ダウンビートの位置がずれてしまうと何がなんだかわからなくなる。特にシンコペーションの後でのダウンビートが速く入る癖があるので気をつけよ。
      • 3度のパッセージ - 肩に力が入りすぎて、指で全部弾こうとしてるから動かなくなる。手首の回転を使ってなるべくストレス無く弾けるように練習する。
    • 後で冷静になって思い返すと、家の稽古で筋肉記憶に頼りすぎていたのだろう。このくらいの力で弾くとこの音がでてこのくらい反発があるからそれを利用して次に行く、って感覚に頼っていたので、違うピアノ、違う反響のホールで弾くと出てくる音が違うし鍵盤の反発も違う。すると次に動く場所の記憶が引き出せなくなる、そういう感覚だったんだと思う。
  • Amateur Concert
    • 曲目はバッハ平均律II巻D majorと、カプースチンOp40-7と8。 録画
    • マスタークラスの惨劇から中1日しかなかったんだけど、スローペース&メトロノームでダウンビートの拍感覚と、出したい音を意識してから手を動かす(手の反射で音を出すのではなく)、というのをさらい直したおかげか、何とか崩壊せずに弾き通せた。
  • Haewon Song氏によるレッスン:
    • Haewon氏にはコンサートを聴いてもらっていたので、改善すべき点をピンポイントでレッスンしてもらった。それは腕の使い方。
    • カプースチンのリズムに乗るには、ベースとなるビートが確立してなければならない (Without the basic beats, it sounds messy.) どうやってビートを安定させるか。前腕から中指に鉛筆が入ってると思う。そして、各ビートで、その鉛筆を「打鍵に最適な位置」に確実に持ってゆくことを意識する。親指、小指の打鍵はその鉛筆を軸とする回転運動で行う。
    • 前腕を常に最適な位置に持ってゆくためには、上腕は肘の動きを拘束することなく自由に動かなければならない。ヘリウム風船が入ってると思って。
    • 指だけで弾こうとすると、特に親指は短いので、親指に引っ張られる形になってしまう。すると肘関節や手首が不自然な形に曲がる。上腕二頭筋が常に前を見ているように意識せよ (親指に引っ張られると肘が上がって上腕二頭筋が内側を向く)
    • Practice doesn't make it perfect. Practice makes it permanent. 間違った方法で練習していたら間違えたまま固定されてしまう。練習の時に常に、効率の良い動き、ストレスの少ない動きを考えて練習せよ。

Tag: Piano

Past comment(s)

かなこっこ (2016/11/03 06:03:42):

初めまして。ハワイ島在住のアマチュアピアニストです。 夫の帯同で来たため就労ビザが取れず、ボランティアで教会のChoir Accompanistをしています。 一人で弾いていると気が滅入るのでコンクールに出たらいいのかも、と思い、アロハ国際ピアノコンクールというものがあることを知り、色々調べているうちにこのサイトにたどり着きました。 ハワイ島に来る前、日本にいたときはプログラマだったので、(勝手に)親近感などを抱きつつ、楽しく記事を読みました。

もしもよろしければ、アマチュア部門の雰囲気や、どんな曲をみなさんが弾いていらっしゃったか、教えていただけると幸いです。 乱文失礼いたしました。

shiro (2016/11/03 12:16:16):

おお、一昨日までハワイ島にいました。

私も長く一人で、まったくの自己流で弾いてたんですが、AIPFをきっかけにアマチュアピアニストの知り合いが増え、「弾くために弾く」からもっと広いコンテキストで弾く意味を考えられるようになったと感じています。一流のプロにレッスンしてもらえるのも貴重な体験で、おすすめです。

コンペティションについては、参加者もそれほど多くないですし(2013年5名、2014年9名、2015年5名、今年は9名か10名だったかな)、有名なアマコンとは全然違う雰囲気だと思います。技術的な難易度を競うみたいな感じはなくて、表現したいものを表現したり、楽しんで弾いたりするのがいいんじゃないかなと。とはいえコンペという形式ですからプレッシャーはありますが、それも励みになります。

曲目については、去年、今年のプログラムをどこかにやってしまったので、一昨年のプログラムをスキャンしました: http://blog.practical-scheme.net/images/aipf-amateur-competition-2014.png 特に制限はないので皆さん好きな曲を選んでいるようですし、それが一番だと思います。

shiro (2016/11/03 12:23:23):

それから、2月にマウイでアマチュアピアニストのフェスティバルがあります。

Maui Piano Amateurs Festival (MOPAF) was created as an educational forum in the Art of the Piano for classical non-professional musicians.

  • MOPAF is meant to provide a performance forum for all levels of non-professional classical pianists
  • MOPAF’s purpose is to provide a venue for adult pianists to come together in a congenial atmosphere, to perform and to share their musical passion and ideas with others of like interests and talents
  • MOPAF provides non-professional pianists with the opportunity to perform and express themselves with like-minded musicians in a non-judgmental and friendly environment
  • MOPAF believes that music and the performing arts contribute to the enrichment of our lives.
  • MOPAF’s objective is to make your time with us a joyous experience. We will always be delighted to see you in Maui, either as a participant or among the audience. Where you come as a performer or, audience member, we want you to leave - = - MOPAF’ events musically enriched with new friends who share your enthusiasm for the piano.
Dates

Saturday, February, 18th at 4:00pm at the Wailuku Union Church Meet the Artists Reception will follow the concert at the Dudge Hall, Wailuku Union Church

Pre-requisites

  • Professional pianists may not participate.
  • Minimum age: 25 (no upper age limit).
  • Please send your information to DFMusicMaui at gmail dot com with your full name, address and profession. Please enclose an electronic photo jpg., your short BIO and the program you are going to perform (with detailed title of each piece)
  • Deadline: December 15th, 2016 The masterclass will be scheduled either on Friday, February 17th or Sunday, February 19th 2017. (One of these days might be used for the second concert due to the large number of participants)

かなこっこ (2016/11/06 10:56:50):

こんばんは、ご丁寧かつ詳しい返信ありがとうございます! youtubeのフェスティバルの様子を見ると、温かそうな空気感があっていいなあと思っていました。 アロハ国際ピアノコンクールは15-20分と、日本のアマチュアコンクールと比べてかなり長めですよね。なかなか曲を暗譜するのが大変そうです。 マウイでもピアノフェスタがあるのは知りませんでした。ハワイ島にもあればいいのですが、ないので残念です。。 2017年のAIPFに出られるかはちょっと分かりませんが、出られるように練習に励みたいと思います。ありがとうございます。

ちなみに講評って頂けるのでしょうか。

shiro (2016/11/07 00:49:53):

アマチュア部門は例年、楽譜使用可になっています。やはり暗譜よりもどういう音楽にしたいかが重視されるのではないかと。20分あるとプログラムに工夫の余地が広がっていいですよね。

これまでのところ、コンペでは個別講評はないです。結果発表自体もおまけみたいな感じで、ジャッジしてもらう場というよりはシェアする場という側面が強いかと。1位になるとwinners' concertでもう一回弾く機会が得られますが。

アマチュアアカデミーに参加すればレッスンやマスタークラスの機会があるので、学びという点ではそちらの方が実りはあるかもしれません。

かなこっこ (2017/04/09 07:03:17):

こんばんは、ご無沙汰しております。 今年のAIPF2017にエントリーし、受理されました。 今回はアカデミーには参加しないのですが、もしかしたらshiro様とすれ違うくらいはあるかもしれませんね。 ハワイ島で今習っている先生は、かつてAIPFに出場した高校生の生徒さんがいたらしく、わたしよりも熱心に教えて下さいます。ありがたいことです。

いま住んでいるハワイ島ヒロは、アマチュアピアニストが少なく(むしろプロのほうが多い)ピアニスト仲間があまりいないので、今回様々な地域から来られるピアニストの皆さんとお会いできるのをとても楽しみにしています。 ホノルルのピアニストの皆さまにもいつかお会いしたいものです……!

shiro (2017/04/09 23:15:13):

すばらしい! 私は昨年のうちに選曲も済ませてたんですが思うようにさらえず、どうも間に合わない公算が高いのでまだ迷ってます。でも友人は何人か出ると思うので、少なくとも聴きには行きます。

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