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2016/12/29

100 Rejections

今年は、学生映画も商業も全部ひっくるめてだけど、14回オーディションを受けた。 LAやNYでやってれば週2回とか受けるそうだから、 それに比べれば全然たいしたことはないけれど、 自分的には年間最多記録である。


こちらでオーディションを受け始めて落ちつづけてた頃、 「100回落ちるまでは諦めずに続けてみよう」と思った。 幸い数回に1回くらい拾ってもらえるようになって、 じゃあ年数回くらいのペースで受けてれば年1回くらい何かやれるかな、 てな感じで気が緩んでいたのだが、 「年間100回落ちることを目指せ」という記事を読んで考えを改めた。

In late 2011, a writer friend was sharing her experiences of having months of uninterrupted writing time at her residencies at the Millay Colony, Ragdale, and Yaddo. I was staggered by her impressive rates of acceptance.

[...]

I asked her what her secret was, and she said something that would change my professional life as a writer: "Collect rejections. Set rejection goals. I know someone who shoots for one hundred rejections in a year, because if you work that hard to get so many rejections, you’re sure to get a few acceptances, too."

これは作家の話なんだけど、すごく成功しているように見える作家の友人に秘訣を聞いてみたら、 「不合格/不採択/ボツ通知を集めるの。目標数を決めてね。年間100回落ちることを目指してる人を知っているけれど、それだけ頑張って落ちようと思ったら、そのうちいくつかは受かっちゃうわけ。」

生涯で100回なんてぬるかったっすね。毎年100回かあ。 あらゆるチャンスを、どんなに可能性が低くても、捕まえるつもりでいないと難しいだろう。

でも、落ちることで目標に近づく、と考えると、挑戦へのハードルはちょっと下がる。

落ちてもいいからと何も準備をしないで受けまくる、というわけじゃない。 少なくともオーディションについて言えば、 いい加減な準備で受ける方が万全の準備で臨むよりもうんと恐ろしいことなので、 必然的に準備はするようになる。


で、 エージェント経由でのオーディションは時の運だし増やしたくて増えるもんでもないので、 オープンオーディションで必ずしも自分のタイプと一致しなくても、 あるいはリモートでのプロダクションへのビデオオーディションとかでも、 とりあえず受けるようにしてみた。

100回にははるかに及ばないが、 オーディションの頻度が上がることで、変わってきたことがある。

オーディションは自己顕示ではなく作品発表の場、と割りきれるようになり、 何を準備してゆくべきかが明確になったことだ。

映像系のオーディションでは、1〜2シーンをあらかじめ受け取り、 それを演じるのが一般的だ。1次審査では相手役の台詞をADさんとかが読んでくれて 一人で演じる。2次審査(callback)がある時は、他の役者との絡んで演じることもある。 併せてモノローグを演じることもある。

どっちにせよ、シーンを演じるわけだから、 普段のアクティングクラスと同様に、シーンを創ってゆけば良いのだ。 アクティングクラスの場合は事前に相手役とリハーサルできることがあるから若干事情は異なるが、 リハーサルをやる直前の状態までは自分で持っていけるわけで、 その手順は普段の準備と何ら変わらない。 台詞を入れて、シーン分析を行い (superobjective・objective・obstacle・"the moment before"の同定、 substitution・inner object・actionの選択)、 シーンを成立させるところまで作っておく。 この準備過程は、やればやるだけ上手くなってゆくので、 オーディションもその機会だと思えばいい。

それを見て向こうがどう判断するかは向こう次第で、 自分の力の及ぶところではないから気にしても仕方ない。 たとえ素晴らしい演技が出来たとしても、 それが向こうの考える作品にフィットするかどうかは別問題だから。 ただ、自分が作って行ったシーンを人前で演じてみせる、という経験は確実にひとつ積み重ねられる。

こう思い始めたら、オーディション後の振り返りも別の意味を持ってきた。 以前、オーディション後に「あそこはああすれば良かった」などとくよくよ考えてもダメと書いたことがある。 それは変わっていない。 オーディションの場で起きたことについて後から別案を考えることに意味はない。 けれども、準備は足りていたか、結果としてシーン中にどこまでtruthfulになれたか、 という点について振り返り、次の準備へと反映することはできる。 substitutionは自分の中ではっきりしていたか、 the moment beforeを忘れていなかったか、 相手にreactできていたか、このへんの振り返りは、 アクティングクラスでシーンを演じた後の振り返りと全く同様だ。

舞台系のオーディションでは脚本全体が対象でどこを演じるかを事前に知らされないので、 完璧に準備してゆくのは難しい(未出版作品だと、契約の都合上脚本の持ち帰りも出来なくて、 劇場に行って目を通すだけ、ということもある)けれど、やれるところまで分析しておくことはできる。

最近は自分でシーンを録画して送る、self-tape auditionも増えてきた印象がある。 今年は4つやったかな。 オーディションの話が来てシーンの脚本を受け取ってから締切りまで36〜48時間しかないこともある。

脚本を受け取ったらまず、相手役を確保する。写るのは自分だけだけど、 相手の台詞へのリアクションは非常に重要なので、 カメラの向こうで生身に人間に読んでもらうのが極めて有効だ。 役者仲間には、 仕事の昼休みに手伝ってもらったりとか、色々世話になった。 感情的なシーンだと、静かな場所の確保も必要になる。 段取りをつけて、自分の演技の準備もして、効率的に撮影し、編集して送る。 これも回数をこなせばそれだけ練習になる。

10月にハワイ島で撮影した映画もこの形式のオーディションだった。 10/9の夜にエージェントから「明後日の午前中までにオーディションビデオ出して」と言われて大急ぎで段取りつけて翌朝撮影。 1週間後の10/17に「あなたを使いたいんだけど5日後から10日間ハワイ島に来れる?」と連絡があって、 慌てて仕事のスケジュールを調整した。 映画は来年公開予定。 3シーンくらい出演してる。カットされてなければ。


さて明日も撮影なので準備せねば。

Tag: 芝居

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