2013/03/31
暫定作業環境
ところで数日前にメインのPCが壊れたのでサブPCをUbuntuマシンに仕立ててとりあえず仕事できるようにしたのだけれど、ついでに家のLAN構成を変えたり、メールの環境をようやくIMAPにしたりと (実は設定変えるのが面倒でずっとPOPで使ってたのだ) 「この機会にやっとこう」という細かい作業に時間をとられたものの、旧マシンのホームディレクトリもそのバックアップコピーもまだつないでない。それでもあまり困ってないというのが新鮮。昔なら何を置いてもディスクを移したものだったけれど、それだけ色々なものをオンラインに置くようになったってことだなあ。ソース含め大抵のものはリポジトリをサーバに置いてバージョン管理してるし。
まあそうは言っても、緊急でないもの (JenkinsでGauche HEADのビルドするだとか、サーバのデータのバックアップを手元にも持っておくスクリプトだとか) はまだ回復してないので、あくまで暫定だけれど。それにこのマシンはメモリを2GBしか積んでないので色々つらい。旧マシンのメモリを移そうとしたら、このサブPCのメモリはDDRだった…
Tag: Computer
2013/03/31
ひと休み
先週日曜のきっかけ稽古(wet tech)、月曜のゲネ(dress rehearsal)、火曜水曜の招待客を入れたプレビューを経て、木曜からの公演が無事開けた。普通は木~日の公演だけれど、今日はEaster Sundayのため休演。ひさしぶりにゆっくりできた。
公演はまだあと4週間続くのだけれど、初日が開ければ巡航速度モードで、生活のリズムの中に組み込んでゆくことになる。
今回の芝居は、演出をLAから、脚本家をNYから迎えている。これまで6週間、一緒に芝居を作ってきたけれど、彼女らは来週にハワイを発つ。「演出は初日の幕が開くまでが仕事。あとの舞台は役者のもの」とはよく言うけれど、ちと寂しい。
Tag: 芝居
2013/03/29
ピアノレッスン88回目
- Bach: Well-Tempered Clavier Book I No. 3 (C♯ major)
- んー。ノーミスでやりたかったけどできなかった…
- Scriabin: Sonata No.4
- 一応暗譜。まだゆっくり。
Tag: Piano
2013/03/27
マシン壊れた
しばらく前からメインに使ってるPCがちょくちょく固まるようになってた。 ちょうどビデオカードを換えてドライバも新しいのにしたのと時期的に同じくらいだったので、 そのせいかと思ってドライバを色々なバージョンに入れ替えたり、手持ちのカードを色々試したり してみたんだけど、以前の組み合わせでもたまに固まる。なんだろうと思っていたら、 昨日芝居の稽古から帰ってみると立ち上がらなくなっていた。
複数のカードでだめだったからマザーボードかな。コンデンサが膨らんでるし、 そろそろ寿命かもしれん。5年くらい使ったから仕方ないか。
とりあえずWindows載せてたサブマシンをUbuntuにして仕事ができるようにしようと したんだけど、メインマシンは我が家のゲートウェイでありdhcpdでもあるので 色々面倒で結局丸一日費やしてしまった。
さて新しいのを注文しないとならないけどうしようかな。Core i7はまだ結構高いなあ。
Tag: Computer
2013/03/22
『夏への扉』の公証人のくだり
USに来て、「昔、小説で読んでずーっと謎に思っていたアレはコレだったのか!」と膝を打つことがある。
『大草原の小さな家』シリーズの一冊に、お父さんがクリスマスの前に街まで買出しに行って、 吹雪で帰ってこれなくなるというエピソードがある。 お父さんは吹雪をおして帰ろうとして道を失い、古井戸か何かに落っこちるんだけど、 それが幸いにシェルターとなって助かる。 そこで閉じ込められている間に、 お腹の空いたお父さんは「クリスマス用に買ってきた牡蠣のクラッカー」を全部食べてしまった、という描写があった。
この「牡蠣のクラッカー」っていうのが子供の頃からずっと不思議で、 何だろう、牡蠣が練り込んである、っていうのも変だよなあ、 乾燥させてるのかなあ、どんな味がするんだろう、と心に引っかかってた。 大学の時に原書も読んだけれど、原書でも"oyster cracker"とあって特に説明はないので、 謎は解けなかった。
なので、スープに入れる オイスター・クラッカーを知った 時に積年の疑問が解けてちょっと嬉しかった。 お父さんが食べたのはこれだったのか!牡蠣が入ってるわけじゃなかったんだね。
★ ★ ★
同じように、子供の時に読んでからずっと疑問として心にひっかかっていたのが、 ハインライン『夏への扉』の次のくだりである。主人公ダンが友人の娘であるリッキィの キャンプ先を訪れて重要な書類を渡そうとするところだ。
手元のハヤカワ文庫版(福島正実訳)より引用する。 いまだに訳本を持っているくらいに、好きな作品なのだ。
署名しかけて、ぼくはまたもや舌うちした。証印がない。ぼくは時計を見た、しまった、 もうこんな時間なのか! ぼくたちは、知らぬまに、1時間の余も話しこんでいたのだ。 そのとき、わが番犬女史が事務所から首をつき出した。「保母さん」
「はい?」
「このへんに、公証人はいないでしょうか? やっぱり村まで行かないとだめですか?」
「わたくしも公証人ですよ。なにかご用ですか?」
「すごい! 証印をもっていらっしゃいますか?」
「肌身話さず持っていますよ」
そこでぼくは彼女の前で署名し、彼女が署名して、二人の署名の上に証印を打ち出した。 ぼくは心の底から安堵の溜息をついだ。さあ、ベル、これでも改竄できるものなら、 やってみるがいい!
保母の女は、好奇の目を証券に注いだが、さすがに質問はしなかった。 ぼくはことさら厳粛な面持ちで、「不幸というものは必ずおきるものです。 その場合の用心ですよ」といった。女はわかったようなわからないような顔でうなずいて、 また事務所に戻っていった。
「証印」って何だろう。ハンコみたいなもの? なんかとても大事なもののようだけれど、だとしたらなんでキャンプ場の付き添いの女性がたまたま持っててそれが使えたりするんだろう?
これも、USに来て公証人のお世話になった時に、ああそういうことだったのか、とわかった。
日本にも公証人ってのはいるみたいだけど、普段の生活でお目にかかることは滅多にないと思う。 USだと、少々大きな手続き (車の売買くらいの規模とか) になると公証人(notary public)のお世話になる。10数年暮らしてて、これまで数回利用したかな。資格は必要だけどそれ専門の職務というわけじゃなくて、普通の人がやってる。「確かに本人がこの書類に署名しましたよ」ということの公の証人となってくれる人だ。
"notarized" が要求される書類は、署名欄に勝手にサインしてはいけない。 公証人の前で身分を証明し、署名するところを見てもらう。その後、公証人が「確かに本人が署名したことを目撃しました」という署名をして、最後に証印(seal)を打つ。 これは大きなペンチみたいなもので、署名部分を ガッシと挟むとでこぼこの模様が浮き上がるというやつだ。 これを施された後で署名を偽造するのは、確かに難しいだろう。
★ ★ ★
と、まあこれだけの話なんだけれど、これをわざわざ書こうと思い立ったのは、 最近原書の『The door into summer』を読んでいてこのくだりに差し掛かったためだ。
ああここも昔は謎に思っていたなあ、と思いながら読んでいたら、なんかちょっと違う。
I started to sign and then noticed our watchdog sticking her head out of the office. I glanced at my wrist, saw that we had been talking an hour; I was running out of minutes.
But I wanted it nailed down tight. "Ma'am!"
"Yes?"
"By any chance, is there a notary public around here? Or must I find one in the village?"
"I am a notary. What do you wish?"
"Oh, good! Wonderful! Do you have your seal?"
"I never go anywhere without it."
So I signed my name under her eye and she even streched a point (on Ricky's assurance that she knew me and Pete's silent testimony to my respectability as a fellow member of the fraternity of cat people) and used the long form: "---known to me personally as being said Daniel B. Davis---" When she embossed her seal through my signature and her own I sighed with relief. Just let Belle try to find a way to twist that one!
She glanced at it curiously but said nothing. I said solemnly, "Tragedies cannot be undone but this will help. The kid's education, you know."
She refused a fee and went back into the office. I turned back to Ricky and said ...
- 翻訳だとダンが証印を持って来なかったと舌打ちしているようにも読める。 もちろんダンが持っていても意味がないものだ(自分の署名の証人にはなれない)。原書では 「サインしかける」→「付き添いの女性が覗いてるのに気づく」→「時間経過に気づく」→「でも手続きを確実にしたいがために公証人を尋ねる」、という流れ。
- "she even streched a point" のくだりがごっそり省略されている。これは公証人が本人確認したよ、と書き込むところをより強い形式で書いたってこと。
- "Tragedies"のところも変えてある。原書では「起きてしまった悲劇をなくすことはできないけれど、これは少しでも助けになるでしょう。子供の教育のためですよ」あたり。
- "She refused a fee" も変えてある。公証人は手数料($10とかそんなもの)を取るのだけど、彼女は受け取らなかった、ってこと。
日本では公証人制度の馴染みが薄いので、大胆にアレンジしたのかもしれない。クライマックスに近いところだから、説明を足してスピード感が薄れるとまずいしね。 (このへんは翻訳者のバランスによる判断だと思う。個々の文やパラグラフを1対1で訳すよりも「原文の背後にある流れ」の方が重要であることはある。)
とはいえこの後も邦訳と見比べながら読み進めてみたら、文や、時にはパラグラフごと訳が省略されてるところがいくつか目についた。もしかするとこの訳は別の版に基づいてるのかもしれない。
翻訳自体にケチをつける意図はないけれど、全体を通して、原書の方が流れが良いとは思う。 『夏への扉』は最近新訳が出てるようだから、今度帰った時にでも見てみよう。
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