Island Life

2012/04/24

乱択アルゴリズム

結城浩さんの『数学ガール/乱択アルゴリズム』、昨年日本に行った時に購入してたんだけどやっと読んだ。

フェルマーの巻やゲーデルの巻はわりと一直線だった印象があるけど、今回は前半いろんな話題が出てきて、つまみ食いみたいだなと思ってたら後半でそれらが見事に絡み合って収束し、読んでてとても楽しかった。身近な話題だったせいかもしれないけれど、扱うネタの分量としても良いバランスだったのではなかろうか。ゲーデルの巻の10章は説明がきつそうだったから。

ただ、ここまでシリーズ化されるとドラマ部分が少しづつしか進まないのが実にじれったい。数学でいろいろな分野の発展が思いがけず絡まるように、主人公の異なる連作短篇形式で、時々思いがけないつながりがあるような形のも読んでみたい気がする。

ま、次はガロアがテーマだそうで、ちょうど発売後に日本行きの予定があるので楽しみにしている。

★ ★ ★

ランダマイズは、近似解を求めたい時には平気で使うけど、厳密解が必要な時には使って来なかったな。多分、異常が起きた時に再現しにくいってところに心理的な不安があるんだと思う。でも考えてみたら並行プログラムだって再現しにくいという点では同様で、むしろ疑似乱数なら種を記録しとけば完全再現できる分、並行プログラムよりも楽かもしれん。

とりあえずGaucheのハッシュテーブルのコリジョン攻撃回避を考えないとな (少し前に複数の言語で問題になったやつ)。Gaucheは他の言語ほどハッシュテーブルを多用しないのでwebフレームワークの脆弱性とかいう形では出てきてないけど、本質的には同じ問題がある。Gaucheの組み込みのhash関数はCommon Lispのsxhashと同じで、プリミティブオブジェクトについてはハッシュ値が起動ごとに変わってはいけないという制約があるんだけど(永続的なストレージにハッシュ値を使うことを許すため)、そのハッシュ値で衝突した場合にセカンダリハッシュをかますことにすれば、それはテーブル毎にランダマイズできるはず。

Tags: , Programming, Gauche

2012/04/22

これって…

Chris Granger - On concepts and realities

Here's what Light Tables principles are:

  • You should never have to look for documentation
  • Files are not the best representation of code, just a convenient serialization.
  • Editors can be anywhere and show you anything - not just text.
  • Trying is encouraged - changes produce instaneous results
  • We can shine some light on related bits of code

Smalltalk (の環境) っぽい。そっちの方向へ回帰するのは良い流れと個人的には 思うけど、そうだとしたら「何故あのモデルが現在開発現場を席巻していないのか」 「Light Tablesがそれを変えられる理由は何か」という考察が聞きたいところだ。

Tag: Programming

2012/04/21

Don't work too much

Paul Grahamが普通に(controversialでない)「いい話」をしている! 子育てで丸くなったのか?

このtodo listの項目のうち、"don't work too much" あるいは "don't work so hard" というのはちょっとした挨拶にしばしば使われる、私の好きなフレーズだ。 残業している同僚に声をかけて帰る時とか、 客が店を出る時とか、友人と久々に会って食事した後の別れ際とかに聞くことができる。

日本語だと「ぼちぼちやりな」くらいの感じかなあ。「無理するなよ」だとちょっと切実さが出すぎる気がする。

たぶん、"don't work so hard!" って笑顔で言って笑顔で返せるくらいが ちょうどいいバランスなんだと思う。言われてモヤッとしたり シリアスになってしまったりするなら、働きすぎのサインだ。 冗談でもこう言える余裕が無いような雰囲気なら、職場はかなりやばい状態だろう。

Tag: Work

2012/04/19

ピアノレッスン45回目

  • Brahms: Caprricio Op76-2 (B minor): M=69。
    • 色々表情をつけるアイディアを先生と検討。「ここをこうしてみたら」「ここはこういうこともできる」等々。こういうのは脚本分析とも似てるなあ。
  • Kapustin: Op40-7。M=104〜112で通せるようになったがもっとclarityは上げられる。
    • ところどころ、テンポを変えて表現できるチャンスがあるので、時々メトロノーム無しで練習してみるといいよ。
  • Kapustin: Op40-8。四分音符=60で試しに通し。

Tag: Piano

2012/04/17

道徳よりシステム

http://kashino.tumblr.com/post/21268536453/4 経由で。

【古典個展】立命館大教授・加地伸行 あふれる利己主義者

 まだ4月というのに、大学生はもう就職活動、いわゆる就活の時期に入ったとのこと。その特集報道を新聞で読んでいて非常に不愉快な事実と出会った。記者の取材に答えて、就活学生が内定(会社)数を挙げていた。内定3とかと。

 それはおかしいではないか。

 もし、会社から採用内定の通知が届いたならば、ただちに就職する会社を決め、そこへお礼と入社後はがんばりますという返事を出す。そして第2、第3の内定通知は、すぐさま辞退の返事をすべきである。

 にもかかわらず、内定通知が来たあと、順番に承諾の返事を出し、その3社の内、どれを選ぶか、じっくり考えるという。

 ということは、3社の内、2社は採用計画が狂うのみならず、その2社に採用される可能性のあった学生の就職機会を奪ったことになる。

 こんな学生を採用しても、ものの役に立たない。単なる利己主義者を雇うことになるだけではないか。

 さらに言えば、大学生の就職率が低いのも、こういった内定による〈妨害〉が一因なのではなかろうか。

 己の内定数を3とか5とかと誇るのは、人間としての資質にどこか欠けるところがある。つまりは、大学教育を受けたとしても、道徳性を高められなかったということだ。そうなると、教育の問題というよりも、その人間自身の持つ欠陥の問題であろう。

おかしいのは人間性ではなく、「内定」とか「承諾」をなあなあで運用しているシステムの方じゃないかなあ。

就職ってのは企業と被雇用者が契約を結ぶことでしょう。「承諾の返事」が契約書へのサインなら、複数の会社に承諾の返事を出すのは(排他的な雇用契約であれば)単なる詐欺だ。一方、返事が単に「オファーが出たことを認識しました」というアクノリッジなら、その後急いで契約を結ばない企業が戦略下手なだけだ。

ビジネスやってれば、契約書に双方がサインするまでは「何があってもおかしくない」ってことくらい嫌というほどわかってるはずだと思うけど。契約直前にポシャる話なんていくらでもあって、「あの契約が成立してれば…」なんてのは飲み屋でする愚痴話にもならない (契約した後でトラブることだってあるけれど、それは契約内容に基づいて責を問うことができる)。

契約ってのは双方を縛るものなんで、「承諾書にサインしたら他の企業に行かないよ」っていう一方向の条件だけの書類にサインさせるのはもちろん無しね。企業側にもサインによって「提示した条件で雇います」って縛りがないと(当然、契約書には給与他雇用条件を明示しておく)。一般教養として学校で教えとくべきなのは、一方向の義務しか書いてない書類にサインしちゃだめ、といったことだ。

企業が就職する学生に「社会人」としての自覚を持って欲しいと望むなら(そもそも「社会人」なんてそんな偉いもんでもないと思うけど)、その入り口において、まず対等な立場で交渉して契約を結ぶってことから始めないとなあ。位置づけの曖昧な「内定」を出しといて、なんとなく「道徳心」で学生の行動を縛ろうとする、そういう態度の方がずっと非倫理的だ。

定義のはっきりしない「内定」を出してるから、学生の方も就職を入学試験の合否みたいに思っちゃうんじゃないか。どれかを選んでサインするまで、「内定」はただの絵に描いた餅で、その数を自慢しても虚しいだけなのに。

(一応、内定を雇用契約とみなすかどうかについての判例はあったと思うけど、最初からちゃんとした契約書にしとけば済む話だ)

関連するかもしれないエントリ:

  • 「御社が第一志望です」 - オファーのアクセプトを契約と考えれば、ほいほい承諾することも、またそれを強要することも、そうそうできないはず。

Tag: Career

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