2006/01/23
センター試験のリスニングのトラブルのニュースを読んでいて思ったんだが、 新しい機械を50万台近く配って、一回限りの試験をやらせようっていう発想が 何というか、日本人的だなあと思う。「ちゃんと動いて当然」という頭 があって、付けたしのようにトラブルへの対応手順を考えたんじゃなかろうか。 こっちじゃそういう発想は出てこない。うまくいきっこないから。
人間が相手の場合、失敗に大きなペナルティを課すことで「ちゃんとやる」 圧力をかなりの程度まで増やすことができ、実際に日本社会の多くの部分が そのようにして動いているのだが、機械の故障率ってのは人間ほど柔軟じゃない。 メーカーにプレッシャーをかけて多少調整することは出来たとしても、 結局はコストとのトレードオフになる。入試センターは当初 「故障はゼロと思っていた」と言ってたそうだが、 本気で故障率を10^-6以下にしたつもりだったんだろか。
エラー処理が醜くなる時っていうのはだいたい設計をしくじっている。 トラブルが一定率で起きることを織り込んでいれば、 トラブル時の再テストや再試験などにあまり複雑な手順を設定できないはずだ。 例えば「一度しか聞けない」という制限をはずせばずいぶんすっきりすると 思うのだが。装置に頭出しをつけなくちゃならないけれど、機器トラブルは すぐに交換すれば済むし、操作ミスのリカバーも容易になる。 それによって故障率のマージンが広く取れるならコスト的には どっこいどっこいになるかもしれない。
何度も聞けていいのか、に関しては、そもそもリスニングで何を 試験したいのかってことになる。ネイティブのスピードで読まれた英語を 一発で聞き取れる受験生なんてほんのごく一部だろうから、問題はかなり ゆっくり読み上げられていたのだろうと想像する。 だが、今後受験生が英語を使ってゆく場面で、(1)相手がゆっくりと 一度だけ喋ってくれる (2)相手は普通に喋るが、聞き返したら何度でも 言い直してくれる、のどちらに遭遇することが多いだろう。
自分の経験からすると、リスニングの能力はリニアに向上するのではなく、 不連続な段階がある。その一番重要なものは、「どの単語が聞き取れな かったかが自分でわかる」という段階だ。それをクリアすると実用上 あまり不自由することがなくなる。 で、複数回聞くことによって救われるのはその段階に達している受験生 だけなので (それ以下だと何回聞いてもわからない)、複数回聞けるように することの影響ってあんまり無いんじゃなかろうか。
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