Island Life

2021/10/05

無限cxr

carcdrの合成 (car, caddr, cadddr,...)って4段階までしか無いのか」ってツイートを見かけたので、無限に合成されるのを作ってみた。 あらかじめ定義しておかなくても、ソースコードを読んだ時点で展開されるので、 いくらでも長いc[ad]+rを使える。

これを使えば『Land of Lisp』のビリーとボブの会話も実行できるぞ!

(setf *readtable* *cxr-readtable*)

;;「ジブラルドルのエメラルド」が今週末に超特急列車で運搬される
(defparameter *train*
  '((controls)
    (empty security-camera)
    (gem)
    (empty guard1 empty empty guard2)
    (passenger-seat passenger-seat passenger-seat passenger-seat)))


;; こう言えばいいかな。ブツは列車のCADDRにある
(caddr *train*)
; => GEM

;; それからセキュリティカメラが、つまり、列車のCADADRにある。
(cadadr *train*)
; => SECURITY-CAMERA

;; ここに、列車のCADDDDRに乗れる乗車券を買ってあるから
(caddddr *train*)
; => (PASSENGER-SEAT PASSENGER-SEAT PASSENGER-SEAT PASSENGER-SEAT)

;; でもこのCADADDDRとCADDDDADDDRにいる警備員はどうするのさ???
(list (cadadddr *train*)
      (caddddadddr *train*))
; => (GUARD1 GUARD2)

なお、これを作ってたら"Land of Lisp"翻訳版のtypoに気づいた (最後のDが一個多かった)。やはり文中のコードは全て実行して検証すべきであるな。


ちなみにこの実装だと、クオートされたリテラル中にcaadddaddarみたいのが出てきた時にちょっとまずいことになる。それを回避するにはcxr-reader中で無理くりシンボルへの束縛を作っちゃう手がある。例えば expand-cxr を下のものと入れ替える。

ただ、規格上、マクロ文字リーダは(streamから読む以外の)副作用を持ってはならない、とされているので、厳密にはよくない。とはいえその規程はリスタートなどで複数回リーダが呼ばれた場合に動作を保証するためのものなので、冪等な副作用なら問題にはならないだろう。

Tags: Lisp, CommonLisp, LandOfLisp

2020/08/01

高校受験

早いもので息子は来週から高校生なのだが、高校受験についてこれまで書いてなかったので記しておく。 日本とはだいぶ違って、ほぼ1年がかりのプロセスになる。

なお、公立高校は受験なしで(学区の高校に登録さえすれば)入れる。 息子は私立で気に入ったところが2つばかりあったので受けて、そのうちひとつに行くことになった。

私立を受けるプロセスは、まず中学最終学年(8年生)が始まって程無い10月-11月に各校で開かれる オープンハウスに行くことから始まる。キャンパスを訪れて説明を受け、 現役生徒が案内役となって各教室を訪れ、 そこで教科担当の教師が授業内容を説明してくれる、という形式だ。 案内役の生徒は質問にてきぱきと受け答えしてくれて、 自分が高校生の時にこんなに喋れたかな、と思うくらい皆しっかりしている。

並行して応募書類を揃える。今では全てオンライン。各校指定のフォームに家族情報などを 記入し、中学の成績書類、およびエッセイ課題をアップロード。 現在の担当教師1-2名からのコメントと、 学校によっては課外活動(スポーツチームや習い事)のインストラクターからのコメントが 求められるんだけど、これはオンライン応募システムに先生等のメールアドレスを入れれば そちらにコメント依頼が飛んで、直接専用フォームに記入してもらえるようになっている。

これの締切りがだいたい11月末。なのでそれまでに受ける学校は絞っておかないとならない。 (学校によってはlate applicationを1月末くらいまで受け付けている場合もある)。

筆記試験は、全国標準のSSATというテストがほぼ毎月あるので、 それのどれかを受ける。結果は直接志望校に送られる。 複数回受けてもよく、その場合は一番良い結果が使われるが、 何度も受けたから点が良くなるという性質の試験ではない。 もちろん形式に戸惑って点を落とすのはあほらしいので慣れておく必要はあるけど、 サンプルの問題集は公式からも出てるのでそれをやっておけば良い。

なお、科目は英数、それとエッセイ。英数はマークシート、エッセイは採点されず そのまま志望校に送られる。

数学の問題は日本基準ではたいして難しくない。 (息子はこっちのカリキュラムしかやってないし、苦手なのでかなり苦労していたが)。 英語の方は、英語非母語だからそう感じるのかもしれないが、かなり骨がある印象を受けた。 語彙力が要求される。類義語や対義語選択問題は私もわからないものがいくつもあった。 尤も、普段から本をたくさん読んでる子なら逆にすらすらいけそうだと思う。 日本のように「中学で教える範囲」が国によって決められててそこから出題される、 というものではないので、付け焼き刃の試験対策はあまり通じなさそう。 もともと「教わったことがどれだけ身についているか」というachievement testではなく、 適性を見るaptitude testなので、完璧に答えることは期待されていない。

あと、このマークシート、「上記のいずれでもない」という選択肢があったり、 間違えてマークすると減点 (-0.25点換算) されるので、 「わからなかったらあてずっぽうにマーク」が通用しにくくなっている。 全然わからなければ空欄にしておく方が良いのだ。

SSATの点数はあくまで参考値のひとつで、 それにどのくらい重みを置くかは学校の方針次第なので、 点数をあまり気にしても仕方ない。私も結果は一応見たけど忘れてしまった。 多分息子は結果さえ見てない。

年が明けた1月-2月に、面接がある。 一つの学校はその場で課題を与えられてエッセイを書き、それに基づいた口頭試問。 もうひとつの学校は、 平日に丸一日「体験入学」して高校1年と同じ授業に参加し、 その後その感想などを試験官と話すというものだった。 オブザーバーではなく他の生徒と同等に扱われて、 議論への参加を求められたりしたそうだけど、 「習ってないことに触れる」こと自体がおもしろかったようだ。 なお後者の場合、中学は一日休むことになる。

何にせよ、日本と比べて、 自分の考えを文章や口頭で表現するスキルがずっと重視されている感じである。

あと、Financial Aidの申し込みが2月下旬締切り。 前年の納税申告書をつける必要があるので、今年はがんばって早めに確定申告を済ませた。

合否が届くのは3月半ば。日本のように掲示板に張り出されるということはなく、 手紙で来る。 息子は一校合格、もう一校はwaitlist(補欠)。 4月半ばまでにデポジットを払う必要がある。 結局waitlistの方はacceptの通知は届かず、合格した方に行くことにした。

日本だと入試に向けて頑張るというイメージの受験だけど、 こちらではプロセスがだらだら長引いて「この一発で決まり」というものが無いので、 短期の対応で何とかなるようなものではなく、 なるようになるさと気楽に構える方が良さそうである。

Tag: 生活

2020/03/12

Defense

らむ太の通う中学校では、 最終学年(8年生=日本の中学2年生)の終わりに卒業審査に相当するものがあって、 それに合格しないと卒業できない。 といっても受かるまで何度もリトライするというものなので、 今まで合格できなかった生徒はいないらしいが。

この卒業審査はportfolio defenseと呼ばれている。 大学院の論文審査をthesis defenseというがそのdefenseと同じ用法。 自分の主張を立証して、審査委員からの質問に答えるあれだ。 様々な疑問に対し言論でもって自説の成立を堅守するということだ。

らむ太の学校の場合、生徒は以下の5つのスキルを卒業までに身につけることがミッションとなっている。

  • Reasoning Analytically: Making judgements based on reasons and evidence
  • Managing Effectively: Finishing what you start, with effort, organization, and care for quality
  • Communicating Powerfully: Expressing yourself so that others understand
  • Collaborating Productively: Working together toward a common goal
  • Thinking Systematically: Seeing patterns, making connections, and designing solutions

で、8年生では学年後期いっぱいを使って、 自分はこれらを確かに身につけましたということを証拠を揃えて論じる資料を作り (これをportfolioと呼んでいる)、審査会で学外の大人を含む審査委員の前で発表して 自分の主張をdefenseしなければならない。

資料と発表それぞれについて、カバーすべき範囲と満たすべきクオリティの基準がかなり 細かく定められていて、それらはリーズナブルなんだけど、 大人でもちょっと本気で取り組まないと合格できなさそうな基準ではある。 単純に自分のやったことやできることを並べるだけではなく、 実際にやったことについて、どのスキルをプロセスのどこに適用したらどうなったのか、 を論理立てて具体的にわかりやすく説明しなければならない。

それだけに、合格することは、自分の主張を緻密に組み立てて他人を説得する、そのプロセスを 妥協なしに経験することになって、大きな自信になるようだ。

日本では中3の終わりに多くの人が高校受験を経験して、それがひとつの試練になるのだろう。 米国では公立高校なら入試はないので、そのかわりの試練と言えなくもない。 ただ、defenseのプロセスだと、 自分の「作品」を何度もイテレーションして、他者のフィードバックを受けながら 十分な質になるまで改善してゆく、という経験ができる。

一度挑戦して採点されてはいここまででした、で終わらせるのではなく、 何度もトライして自分なりの妥協のない基準まで作り上げる、 という経験を今のうちにしておくのは悪くないだろう。 今後どういう道に進むにしても、結局のところ、 評価基準を自分の中に持っていかねばならないのだから。

で、明日がportfolioの第一次締切りなので最近は夜遅くまで頑張っている。 「明日の8時から先生が審査を始めるからそれまでにアップロードできれば…」 なんてことを言い出してて、うーんそういう考え方は、 父さんも身に覚えがありすぎるほどあるから否定はできないが、 もうちょい早く準備しておけよ息子よ。 締切りに苦しむ親の姿を散々見ていただろうに。(いやそれで学習してしまった!?)

Tag: 生活

2019/12/30

振り返ってみると2019年は色々学んで楽しい年だった。

受けたアクティングの集中クラスは Laura Gardner (Monologue & breakdown), Iris Klein (Meisner, Scene analysis), Linda Castro (Shakespeare), Donna Blanchard (Monologue)。あとSAG-AFTRA conservatoryの単発クラスをいくつか。

Lauraにアクセントを直すように言われてアクセントリダクションとスピーチのレッスンを受け始め (継続中)。とても良い。もっと早くやっとけばよかった。

あと10月から役者仲間で集まって週一のオーディション練習。これは普通のオーディションのように2日前に脚本が配られて、準備していってオンカメラで演技を録画して、あとで皆でレビューするんだけど、同じ脚本を他の役者がどう解釈して作ったかを見られる機会ってあまり他に無いのでとても参考になる。自分が思いつかなかった解釈がたくさん出てくる。

受けたオーディションは16回で微増。リモートのセルフテープオーディションは申し込んでもその後セルフテープに招待されるのが2割くらい。ただ、今月に入ってメインランドのエージェントと契約したので来年は増えるかもしれない。もっと準備を日常に組み込んでスムースにできるようにしておかないと。

Tag: 芝居

2019/10/31

覚えるより忘れる方が難しい(こともある)

医学生の訓練や試験のための、standardized patientというプログラムがある。 「患者役」をする役者を用意して学生に診察させるというものだ。 2日ばかり、その患者役をやってきた。

患者役は、訓練や試験に合わせてあらかじめ設計された設定を覚えて、 その設定の人物として診察を受ける。評価のためにはばらつきがあっては困るので、 設定は以下のようにかなり多岐に渡る:

  • 氏名、年齢、家族構成
  • 個人の経歴 - 産まれ、育ち、学歴職歴、病歴、普段の日常生活(スケジュール、食事、アルコールや喫煙、運動、etc.)
  • 家族の経歴 - 親、兄弟、子供、それぞれについて生年や現在の居住地、健康状態、死去している場合は死因と死亡時の年齢
  • 来院の理由
    • 最初に症状を聞かれた時、その追加説明を求められた時、など、いくつかの開始時の会話については台詞が決められていて、常に同じ台詞を言わなければならない
    • 他の病態について十数項目の設定があり、それらは質問されたら答える

これを頭に入れて、その人物として問診を受ける。さらに、学生の診察終了後に 評価フォームがあり、必要な手順を踏んでいたか(例えば身体に触る診察の前に手を洗ったか)、 コミュニケーションは十分だったか、などを記入する。

今回は医学学校1年生が対象で、十数人の学生さん相手に患者になってきた。


始める前は、自分としては何を聞かれても自然に答えられるインプロビゼーションのスキルに 不安があったのだけれど、それはさほど引っかからなかった。 普通に芝居をする時のようにキャラクタを作っておけばほぼok。

意外に難しかったのが、評価のところだ。 20分の診察を受けた後、10分の間に診察の様子を思い出してフォームに記入してゆくのだけれど、 3~4人過ぎたあたりから、 今の学生はこの質問をしたっけ?それともあれはその前の学生だったっけ、 などと考え込むことが多くなった。記憶が混ざってしまうのだ。

普段の芝居の稽古では、繰り返すうちに新たな設定を思いついたら それはどんどん以前の設定に追加されてゆく。 今回も自分のキャラクタはそうやって繰り返しの度に肉付けされてゆくのだけれど、 相手との問答に関しては、学生ごとに記憶をリセットしないとならない。 でも記憶はそう都合良く消えてくれない。

それに気づいてから試してみたのは、学生ごとに頭の中で背景色を別の色に塗りつぶす、 というものだった。脳内背景と問答を結びつけておけば区別しやすいかなと。 効果のほどは、多少はあったような気がするけど、 もっと経験を積んだら別の方法を思いつくかもしれない。


1年生ということは入ってほんの2-3ヶ月ってわけで (米国では4年生大学を卒業してから医学学校に入るので、年齢は多分20代が中心だろう)、 おそらく見知らぬ患者(役)を診察するのは初めてだったろうから、 学生によって問診内容や診察内容にかなりばらつきがあった。 身体の診察の後で忘れていた質問を思い出してまた問診が始まったり、 さっき聞いてるはずの情報をまた質問したり。 あと、こちらは痛みを感じて苦しそうにしているので、 それに共感して慌てちゃってる感じの学生もいた。 こういう経験を積んでだんだんてきぱき診察できるようになってゆくんだろうなあ。

"That's great!", "Terrific!" が口癖の学生がいて、 多分普段そういうノリで会話してるんだと思うんだけど、

「痛みはどのくらいですか? 1から10まで、10を最大の痛みとして?」
「8か9くらいです…」
「That's great!」

「ご両親は健康ですか」
「父が56の時に急な心臓発作で亡くなっています…」
「Terrific」

その口癖は絶対直した方がいいぞ…

Tags: 芝居, 生活

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