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2024/09/05

米国の大学進学

気づいたら3年ぶりのエントリ。前々回に息子の高校受験の話を書いてたけど、その子供が今月からジョージア州サバンナのSavannah College of Art and Design (SCAD) で大学生活を始めている。日本語の情報があまりないんだけど「サバンナ芸術工科大」が定訳らしい。業界ではよく知られている大学。

忘れてしまわないうちに、大学受験のあれこれを書き留めておこう。日本の大学受験とは全然違う。

出願まで

高校受験の時も書いたけど、大学進学準備も高校最終学年が始まってから程なくしてスタートする。8月に学年スタート。共通テストであるSATを10月頭くらいに受けて、第一次出願が11月末だから、日本の感覚だと高3の5月連休明けくらいに共通テスト受けて夏休み前に出願を済ませる感じ。オープンキャンパスなどは9-10月に集中しているので出願先選びもそのあたりが忙しくなる。なお共通テストは年に何回もあって何度でも受けられ、一番高い点数を使うことができる。でも何度も受けたからって点が上がるような試験ではない。

出願時点で必要なのは

  • 高校のそれまでの成績
  • エッセイ
  • 活動記録
  • 推薦状
  • 共通テスト (これは要求しない大学もある)
  • ポートフォリオ (美術系の大学の場合)

日本は筆記試験でほぼ決まるルートが主流なので高3の後半は受験勉強が大きくのしかかるけど、そういうプレッシャーは全然ない。

一方で、高校の成績はそれまでの評価の平均(GPA)になる。A評価が4、B評価が3、C評価が2、D評価が1で、中堅大学だと3.5以上、トップ大学だと3.9以上とか。つまり進学を考えてたら高校の最初から良い成績をキープしてないと、後から巻き返すのはとても難しい。なお、ABCDだと4.0が最高になるけど、A+という評価を取れれば4.3換算になる。

内申点みたいなもんだけど、高校の成績評価方法は科目ごとにシラバスで明示されてて(出席何%、授業中の議論参加何%、課題何%、期末テストもしくは期末課題何%、という具合)、ある程度透明性はある。

出願手続きは共通ポータルがあって、全部オンラインでできる。高校では秋学期に進学向けのクラスがあって、その中でアドバイスを受けながら基本的には本人が自力で進める。

エッセイは結構重要らしいんだけど、これは自分には勘どころがわからない。ただ、進学クラスで綿密に練っていて、最終稿を見せてもらったけどなかなか良く書けていた。日本語でエッセイというと随筆みたいな印象だけど、こちらではどっちかというと小論文。内容だけでなく、主張の明確さやそれを支える論理的説得力も重視される。そういうエッセイの書き方は小学校高学年くらいからずっと指導されてきてて、高校では期末課題がエッセイだったりするのでかなり慣れてはいるんだけど、それでも何度もフィードバックを受けて完成度を上げてゆく。これ見てると日本も文章指導はもっと効果的に出来るんじゃないかと思う。

活動記録は、部活とかボランティアなどの実績を出願フォームに書く。良く「米国では良い大学に入れるためにはたくさんボランティアをさせておかないと」みたいな話を聞くけど、よっぽど競争率の高いトップ大学を目指すんでなければそこまでピリピリしてない感じだなあ。うちもボランティアは学校として何か参加するのを手伝うくらいだったし。

推薦状はどうだったかな、確かポータルがあって、そこにメールアドレスを入れれば依頼が飛んで、直接ポータルに入力してもらう、というような形式だったような気がする。基本的には高校の先生だけど、課外活動で関わった人に依頼したこともあったかな。それは奨学金の応募だったかもしれない。記憶が混乱している。

共通テストは数学と英語。要求しない大学もあるくらいなので、それに向けてひたすら勉強するってものでもない感じ。SATはもともとachievement test (どれくらい高校の内容をマスターしているか見る)ではなくaptitude test (大学での学問についての適性を見る) として作られたはず。まあ途中からaptitudeとははっきり言わなくなったみたいだけど。対策といっても、公式が出してるサンプルテストを2-3回分時間測ってやってみて形式に慣れるくらい。ちなみに日本で教育を受けた自分から見ると、数学はそんなに難しくないが、英語は語彙力が無いと厳しい感じ。高得点を取れる子はかなりたくさん本を読んでるんじゃないかなあ。

ポートフォリオは美術系の大学限定。もう全部電子的に提出できる。学校によってそれぞれポータルがあるので、画像ファイルをアップロードする。完成作品だけでなくスケッチブックを要求するところもあったかな。あげられる画像点数は限られているので、どういうふうに自分の作風をアピールするかは工夫のしどころ。これについては10月頃に、全米の美術大学10数校による合同説明会があって、そこに自分の作品を持っていって各校の担当者のアドバイスを受けられるイベントがあった。

もちろんその時点である程度作品が揃ってないとならないから、ここでも受験前にいきなり頑張るのではなく、時間をかけて準備しておく必要がある。うちは最初から美術系に絞ってたわけじゃないけど、そっち方面にずっと興味を示していたので、「もし美術系に行くならポートフォリオが必要だから、たくさん描きためておくように」とは言ってあった。それが奏効したかもしれない。

身近に日本で藝大・美大を受けた人がちらほらいるのだけれど、日本だと実技試験だし、そのために予備校行ったりしてものすごい準備をするよね。そのへんも日米でかなり違う。この違いがその後の教育やキャリアにどのくらい影響するのか興味深くはある。

とまれ、最終的に息子は4校 (総合大学のアート系学部2校、美術大学2校)に出願した。出願費用は数10ドルが相場だけど、ハワイ大学は地元学生の出願は無料だった。

合格通知から

出願の区切りが11月末なんだけど、びっくりすることに、12月第1〜2週にはもう合格通知が届き始める。息子はSCAD School of Animation and Motion、ハワイ大学School of Cinematic Arts、アリゾナ州立大School of Artからすぐに合格通知がきた。(もう一校は難関の有名美大で、そこは年明けて3月頃になって不合格通知がきた)。

で、入学手続きの締め切りは年明けた5月の頭なんで、半年近い間がある。これも日本と大きく違う。

そして、米国の大学はとにかく高い。州立大でも日本の国立大の2-3倍、私立大だと1年の学費で日本の私大に4年通わせられる。金持ち以外は、奨学金をどれだけ取れるかが勝負となる。

合格通知から数ヶ月は、各大学をより詳しく知り、取れる奨学金と天秤にかけて進学先を選択するプロセスになる。各大学のイベントに参加したり、伝手をたどって教員や学生、OBにコンタクトして話を聞いたりして決めてゆく。

息子に関して言えば最終的にはハワイ大学だと初年度はほぼ全額賄えるくらい、SCADだと半額ちょいくらいの奨学金オファーが得られた。本人は当初は経済的なプレッシャーと、離れて暮らす不安からか、ハワイ大学に傾いていたのだけれど (あと、ハワイ大学SCAには私の知り合いがぼちぼちいるので相談に乗ってもらったりした)、高校の何年か上の先輩がSCADを出ていて、その人と話をしてかなりSCADに惹かれたようだ。

ちなみに奨学金は、家庭の経済事情で支給される連邦のやつと、大学が成績見て出してくれるやつと、それから個別の基金が独自に選考するやつがある。独自選考のはものすごくたくさんあって、それぞれにエッセイ提出や面接がある。頑張り次第によってどれだけ取れるかは変わる。大学進学に金集めを頑張らないとならない、というのは世知辛い話だけれど、ある意味米国の価値観なのかもしれない。

(もっとも、「努力次第で得られる」というゲーム自体が、経済的に余裕があるほど有利になっているので、手放しで賞賛できない面はある)。

息子はぎりぎりまで迷っていたけれど、4月末にSCADに決めた。

自分そこまで大学選びに悩まず安直に決めちゃったので、その点では子供の方がしっかり考えて選んでるなと感心する。

(ところで、これだけ合格通知から入学手続きまで間がある場合、各大学は入学人数をどう見積もって調整してるんだろうというのが不思議だ。合格率1割とかの超一流校だと違うタイムスケジュールなのかもしれない。)

入学まで

高校の卒業式が5月中旬。多くの大学が始まるのが8月下旬から(SCADは9月から)。この間に大学では新入生向けのイベントが開催されたりするけど、東海岸まで飛んで行くのは大変なのでそれはパス。 ただ、リモートでいくつか入学ガイダンスやQ&Aがあってそういうのには参加できた。

高い大学に行くのだから生活費分くらいは稼いでね、と言っておいたので夏の間はバイトに精を出していた。なお、夏は学生バイト要員が大量に出るわけで、割の良いバイトはすぐ埋まる。息子は行動を起こしたのが5月に入ってからで、見つけるまで結構苦労した。やっと見つけたバイトの場所がカハラで、車だとうちから15分だが、自分でバスで通うと40分くらいかかる。でも頑張って通っていた。

あと、入ってすぐの学期でドローイングの科目があるのでそれに備えるといって週2のアートクラスを探してきたり 。今年に入ってからの進学先選びや奨学金応募で外の人と話すことが多かったせいか、自分で動けるようになっているのは頼もしい。

大学寮に入ることになるんだけど、2人部屋か3人部屋で、特に希望しなければ大学側のマッチング任せになる。ただ、ある程度どういう人がいいかとかの希望を出せる。そのフォームの中に「快適に感じる室温」という項目があってなるほどと思った。そこが違う人とルームシェアするのは大変だからね。重要。

寮の割り当てが決まったら、ルームメイトと相談して部屋のレイアウト(ベッドと机の配置はある程度柔軟性がある)とか共同で使うものを誰が用意するかとかを各自相談する。このへん、学校からは詳しい案内がなくて「わかんないことがあったら聞いてね〜」って感じだったので、ここも自分から積極的に動いて聞いてまわらないとならないようになってた。まあ、そういうものらしい。

寮に入れる日時が指定されるので、それに合わせて飛行機を取った。息子初の一人旅がレッドアイ+トランジットありの12時間のフライト+現地空港から寮までも自力でバス、というやや高いハードルだったけど恙なくたどり着けたようである。

入学式とかは特になくて、入寮した翌週からいきなり通常の講義が始まる。なかなかおもしろい大学のようなので、濃い時間を過ごして欲しい。 

Tags: Education,, College

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