2007/08/30
博士の就職問題については分野によって事情が全然違うので、 背景を良く知らずに個別事例に口を出すのははばかられるんだけど、 これはどうかと思った。
理工系ですから、研究室の教授が、助手に残れといってくれるか、他の大学や研究所を世話してくれるか、企業に推薦状を書いて就職の面倒を見てくれるものと思っていました。
しかし、その期待はみごとに裏切られてしまったのです。教授は息子の将来について何も言ってくれなかったし、何もしてくれなかったのです。
ちょっと待てい。博士修了ということは、自分でプロジェクトを立案して遂行する 能力を身に着け、独り荒野を切り開いてゆく準備が出来たということではないか。 そこでなぜ他人に就職の面倒を見てもらおうという考えが出てくるのだ。
いやもちろんこの世は助け合い、何もかも一人でやれるものではない。 私とてバイト先で知り合ったベテラン技術者の人に紹介を受けて院卒後の就職先が決まったし、 独立してからもそれまでのつながりで仕事を受けているわけで、 いろんな意味でいろんな人に「面倒を見てもらいながら」生きている。 誰しもそうだろう。けれど最初からそれを期待して、何もしてくれなかったといって 愚痴を垂れるのは勘違いもいいところではないか。
まあこの記事は親の視点で、本人がどう思っているかはわからないから、 案外本人は親の心配をよそにしたたかに生き抜いているのかもしれない。
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別に、博士を選んだのは自己責任だから自分でなんとかすべき、などと言うつもりはない。 私も博士卒の就職難は構造的に対応すべき問題だと思う。けれどその問題を、 個人的な視点から「多くの努力をして博士号を取ったのに職がない、悲惨だ」と記述 してしまうのは戦略的に上手くない。だって、音大を出たり俳優養成所を出たって 専業の音楽家や俳優になれるのはほんのひと握りだけど、そうなれなかったから 悲惨な人生だって愚痴る人はあんまりいない。ミクロな視点からは同じ状況なのに。
博士が問題になるのは、マクロで見た場合に、そういう人材を活用しないのは 国家的、あるいは人類にとって損失だから、だろう。そう思わない人もいる だろうけれど (というかそう思われていないから現在の状況があるのだろうけど)、 そこを「いや損失なんだ」と具体的な事例を積み重ねて説得してゆくことでしか、 構造は変えられないんではないか。
Tag: Career
cut-sea (2007/08/30 23:33:54):