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2007/11/10

BABEL

"Babel" を観た。すげー映画だと 衝撃を受けた。完成度の高さに。ほんのひとつのシーンを真っ当に作ること がどれだけ難しいかをactingのクラスで思い知らされた直後なだけに なおさら。ハーフマラソンで死にそうになってるところでトライアスロン 10周連続でやってる人達を目にして、ああ、あんなところにはとても 手が届かない、と雲の上を見上げる感じだ。

その後ネットでレビューを見ていたら別の意味で衝撃を受けた。 万人向けの映画でないことは確かだがこんなに評価が割れているとは… でもSICPのレビューも評価が極端に割れてたし、人の世界の見方に影響を 与え得るような力を持つ作品というのはそういうものなのかもしれん。 しかし、「わからない」「期待していたものと違った」とか、 あるいは「理解したけれど共感はできない」という感想は理解できるのだけれど、 「日本パートは不要」とか「無駄が多い」とか、ひどいのだと 「"Crash"の真似」なんていう評を見るとがっくりするなあ。

(ちなみにCrashの公開は2005年中盤。Babelは2005/4の段階の ドラフトの脚本で既に ほぼ最終形と同じ構成になっている。だいたい、製作規模の大きい 映画なら構想のタネから公開まで数年とか普通にかかるわけで、 1年かそこいら公開日が前の映画に影響されるわけないじゃん。 むしろその時の世界の空気によって同時多発的に似たような構想を 得る人がいると考える方が自然だろう)

脚本の完成度の高さは上のドラフトを読んでもわかるが、最終形では さらに刈り込まれているのが興味深い。例えば序盤、Scene 14のAmeliaによる 子供を寝かしつけるための物語などは入れておいたらより「わかりやすく」 なったろうけど、カットしたのは入れなくてもわかるという判断だろう。 とにかくそうやって贅肉をひたすら削ぎ落としているので、 ひとつでもセリフやアクションを見逃すとついていけなくなるかもしれない。 また、先入観無しで素直に見ればとてもわかりやすいのだけれど、 謎解きとか何かを探そうと思って見てしまうと全体が見えなくなって わからなくなるかもしれない。だから「わからない」という感想はわかるが 「無駄が多い」という批評には全く同意できん。

Tag: 映画