2008/05/12
外から見た東京
こないだDVDで『Lost in translation』 を観た。Scarlett Johanssonいいなあ。 映画自体も良くできてると思った。
で、ネット上の感想をちらほら見ていたんだけど、日本からの感想で 「東京の描かれ方がひどい」というものが少なくないのにちょっと びっくりした。『Babel』の時も日本パートについて似たような 感想を見たなあ。 27年間東京に住んでて、離れて10年以上経った身からすると、あの描き方は 外から見た東京を非常にうまくとらえていたと思うんだが。
そりゃあ、あそこに映像化されてたものが「東京の全て」であるわけはない。 そもそも創作は対象のある一面を切り取ってみせるものなんだから。 観客として「ああいうふうに見られたくは無い」と思うのは自由だけど、 創作者が「ああいうふうに見る」のもまた自由だよねぇ。 「ああいうふうにしか見られないというのは(創作者は)東京の何たるかを わかってない」という論はあり得るけどあんまり意味が無い。 そもそもあの映画については「東京の何たるかをわからない」こと自体に 意味があったわけだし。
ちなみにハワイもメディアによく登場するけど、映らないところは たくさんある。創作者に切り取られた時点である程度はフィクションに ならざるを得ないわけで。ただ、だからと言って観客が自分の目で 直接見たら全てが見られるかというと、結局それもその人の視点で 切り取られた断片にすぎない。創作物が力を持っているのは、 切り取られたフィクションの中に真実の投影が潜んでいるからだ。 ホログラムのように、それ自体に真実が記録されていなくても、 観客の視点と合わさった時に真実のひとつが浮かび上がってくる。 それが、創作物を鑑賞する醍醐味なのではないか。
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