2010/03/29
保険に入らない自由
先週僅差で通った米国の医療保険改革法案だけど、日本の感覚からすると、 少なくとも国民皆保険という理念については当然善いことであり、 揉めているのは他の理由、 例えば負担が増える層が嫌がっているんじゃないか、などと思いがちなんでは なかろうか。たとえばこれは日経の記事。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100329/213687/
「誰しも平等に勉強するチャンス、仕事をするチャンスが与えられている。そこで何をするのも自由だ。結果的に成功すれば結構、失敗してもそれは自己責任だから仕方がない・・・」
「医療保険改革法」に本気で反対する人たちは、そのように考えます。「自分たちは様々なリスクも冒しつつ、一生懸命働いて、今の生活を獲得した。そうでない、何もしないで怠けている連中にまで、どうして保険など与えてやる必要があるのか?」といった議論です。つまり「機会平等」と「自己責任」において反対するわけです。
心情としてこれはわかりやすいし、またアメリカってやっぱり助け合いより 個人主義なんだなあ、冷たいなあ、みたいなステレオタイプにも合致するかもしれない。
ただ、こちらでの報道はちょっとニュアンスが異なる。 本音でどう思っているかは知らないが、少なくとも建前上の反対論者の議論はこうだ。
「物やサービスを購入するかしないかは、市民の自由であるべきだ。 今回の法案は医療保険の購入を義務付けることで、市民の自由を奪っている。 これは基本的な権利を脅かしており、憲法違反だ。」
つまり、貧しい人々に保険をもたらす事自体に反対してるんじゃないよ、 保険加入を義務化することで、「保険に入ろうと思えば入れるけど、 でも敢えて入らないことを選択する」という人の自由を奪うことが問題なのだ、 貧しい人々を救うにしても自由を制限しない方法でやるべきだ、 という理屈だ。
まあ、建前の裏側では色々な思惑が蠢いているんだろうけれど、 市民の自由と独立の尊重という建前は 米国のパッチワーク社会をどうにかつなぎ止めているかすがいでもあって、 だからこそ妥協できない一線でもある。 政府の権力の増大を常に懐疑的に見る、というのは健全な感覚だと思うしね。 日本の感覚で「なんでこんなことが通るんだ」って思うようなことでも 反対から見るとまっとうな理念があったりする、ってこと。
(これ以外に、政府からの拠出金が中絶に使われることに対して保守層が 強硬に反対したってのもあるけど。これも毎日のようにニュースで 話題に登ってたけど、日本では報道されてたのかな?)
あ、個人的には皆保険歓迎。無保険はリスクが高すぎる。 あとオバマさんにはぜひ次期も活躍してもらいたいのでなるべく今期中に 景気も回復するといいなあ。
Tag: 生活
とおる。 (2010/03/31 02:04:19):
yarb (2010/03/31 05:03:18):
shiro (2010/03/31 09:08:55):
えっと (2010/05/30 08:11:56):