2011/03/25
それはシステムのせいなんだろか
前エントリでみずほ銀行のトラブルについて書いたが、 続いてこんなニュースがあった。
みずほ銀行では、システム障害によって預金残高を確認できないまま、利用者が申告した通りの金額の引き出しに応じました。これを知った一部の利用者が残高が不足しているにもかかわらず、不正に現金を引き出していたのです。中には、1人で複数の店舗を回って合わせて50万円を引き出したケースもありました。
混乱に乗じてこんな不正が、たいへんだ、っていう論調に違和感を覚えて なんでだろうと考えてみた。
映画 "Catch me if you can" にわかりやすい描写があったが、 小切手ベースのシステムでは、残高を越えた小切手を切ること自体はいくらでもできる。 そんなことをすれば後でペナルティを取られるし、悪質であれば詐欺として 訴追されるから大抵の人がやらないってだけで。 それをやっちゃう人も現実にはいる。 というかうっかりやっちゃう人は多分結構いて (貯蓄口座から当座口座に 預金を移し忘れてたとか)、だから銀行ではわざわざ「当座の残高が不足したら 一定額までは自動貸付しますよ」みたいなオプション(overdraft protection)をつけてるとこもある。
だからみずほの件でも、「そりゃ居るでしょう」と思うだけで、 わざわざニュースになることが新鮮に感じたのかも。 そういう人が居ることを見込んで「後で調べて残高越えてたら貸付ってことにするよ」 ってあらかじめ言っとけばいいだけの話じゃないかな、と。
もちろん残高を越える小切手を書くことは出来るってだけで、 受け手側にはそのリスクを考えた上での対処が求められる。 自分の口座のある銀行で現金化する場合は問題ないけど、そうでなければ リスクに応じて額面を割り引かれたりするとか。 自分がUSに来たころは見なかったけど、 最近ではスーパーなどでは小切手の支払い時に電子的に照会をかける システムが普通になったし。
ある意味これは「継続的に取引をする相手なら無茶はすまい」という信用に基づいた やりとりとも言えるかな。その意味ではクレジットカードも同じだ。 支払い能力以上に使うことはできる。でもそれをしたらペナルティがあるし 取引を継続するための信用を失うから、大抵の人はそれをしない、というだけ。
常に即座に決済される社会に比べて、信用ベースの社会ではリスクを見込んだ プレミアムがつくからオーバヘッドがある。一方で、 即座に決済される完全に同期したシステムってのは作るのも維持するのも 信用ベースのゆるいシステムよりはずっとコストがかかるだろう。 どっちが最終的に安く済むかは、どのくら信用を当てにできるかってことに依存する。
信用ベースといえば、USの鉄道もいちいち改札で全員の切符をチェックなんか しないとこが多いな。近距離なら改札さえ無い路線も多いし、自動改札があっても 「一日券」などは通らないなんてのもある。不正乗車率と、厳密なチェックシステムを 入れることのコストと、天秤にかけてどっちが安く済むかってことなんだろう。
(追記2011/03/26 04:34:40 UTC): でも考えてみたら、日本だって無人販売所もあれば ツケがきくところもある。お互いをみんな知ってるような共同体では 裏切りのコストが高いから信用ベースの運用は安く済む。 ポイントは、それをどうやってお互いに見知らぬ人同士にまでスケールさせるかって ところで、リスクを判断して「一定の不正があっても成り立つマージン」を 設定できればいいわけだけど、そのスケールのしかたが日本とUSでは違う感じなのかな。
Post a comment