2011/09/26
It is the tale, not he who tells it
この話題は根強いなあ。
"「火垂るの墓」原作者、野坂昭如の娘の国語の授業で父の作品が扱われた。問題に「この時の著者の心境を答えよ」というものがあったので、娘は家に帰ってから父に訪ねた。「その時どんな気持ちだったの?」「締め切りに追われて必死だった」翌日のテストで答えにそう書いた娘は×をもらった。"
火垂るの墓のこのエピソードは何回か耳にしたことはあるけど原典を知らないので真偽はよくわからない。「作者の意図なんてわからんよ」という話なら、『ある物語の顛末』がおもしろい。シャーリー・ジャクスンが『くじ』の反響について語ったもの。
よくできた創作物は、歪んだ鏡のようなものかもしれない。人は目を凝らして何がそこにあるか見ようとするが、見えるものは変形された自分の一部なのだ。でもそれが、創作物の価値なのだろう。
つくる人を近くで見てると、優れた作品というのは作者がつくるのではなく、何か大きなものにつくらされるんだろうなという気がする。つくらせる力というのは巨大な潮流で、作者の意図なんてのは海に流される筏の上でぱちゃぱちゃやってる程度の、わずかな力にすぎない。でも、転覆せずに潮の流れ至るところまで筏を導くのは至難の技で、そこに創作者のすごさというのがあるわけだが。
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Tag: 表現
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