Island Life

< 結果を待つ間 | ピアノレッスン38回目 >

2012/02/27

Rumblefishが鳥の声に著作権を主張した件

なんかちょいとおもしろくなっている。

経緯。

  • あるユーザが、野外で自分で撮影したビデオをYouTubeにポスト。 自然の鳥の声は入っているがBGMなどは重ねてない。
  • そのサウンドトラックが、Rumblefishという企業が管理するContent IDにマッチした。
    • Content IDにマッチした場合、通常はビデオの横に広告が表示されて、 収益がContent IDの登録者に行くようになる。 ビデオ投稿者はこれに不満があれば反論(dispute)できる。
  • 投稿者はdisputeした。明らかにマッチングのエラーだからだ。
    • ここまでの流れはよくあること(私の個人的な体験)。 本来ここで、disputeを受けたRumblefishが人間によるチェックをしてクレームを取り下げる、はずだった。
  • ところがRumblefishは「確認の結果やっぱりうちの権利物を使ってる」と回答。
    • あちこちで炎上。
  • RumblefishのCEOがRedditに「RumblefishのCEOだけど質問ある?」スレッドを立てる
    • 今回の件に関しては「担当者の人的ミスだった、クレームは取り下げた」と回答。まあそれだけで簡単には鎮火しないわけだが。

Rumblefishのアクションに悪意を見るか、単なる怠慢を見るかは見解が分かれるところだ。 こういう目にあったユーザにの立場からすればひどい話であることは間違いないが、 私自身はこれは ハンロンの剃刀が適用できるんじゃないかという印象を持った。

RumblefishのFAQの トーンからすると、少なくとも彼らのそもそもの動機は、 「無断使用はキリがないからいちいち追っかけて潰すんでなくアーティストに還元されるしくみを作ろうぜ」ってなもんだったようにも見える。 もちろん「Content IDシステムの隙をついた強欲で狡猾な企業が建前を主張している」と 見ることも出来るけれど、 RedditにCEOが出てきた時点で、なんかもっとナイーブなものを感じた。

システムがあれば必ず裏をかく人間は出てくる。 そこで泥縄的にシステムにパッチを当てて行ったり、 あるいは参加者の倫理に過度に期待するのは上手くない。 いろんな考えの人間が自分に都合の良いように行動しても、 みんながハッピーになる、というふうにシステムを作るのが一番だ。

Content IDのマッチングアルゴリズム自体は改善にも限界があり、 false positiveをゼロには出来ないだろうから (false positiveとfalse negativeの量を調整すること自体は、 より大きなシステム的判断だろうけど)、 その後の裁定プロセスをどうするかってのがポイントだろう。 これはYouTubeの中の人に頑張ってもらうしかない。

現在のシステムでは、disputeに対して権利をクレームした側が再反論した場合、 YouTubeシステム的にはアクションが取れるようになっておらず、 投稿者はクレームした側と直接交渉するしか無いようである。 そして、法的に定められたDMCA takedown noticeと違って Content ID match / disputeのプロセスは一企業の私的なシステムなので、 どちらかが虚偽の申し立てをしてたとしても、それだけで法的に裁かれることはないようだ (虚偽の申し立てによって損害を被ったから賠償しろ、という訴訟には出来るだろうけど)。 一企業として出来ること罰則は最大でもbanするくらいだからなあ。 このへん、虚偽申告や怠惰なチェックがコストに見合わないように バランスが上手く調整できればいいんだけど。

Tag: System

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