Island Life

< loop | 「赤ちゃん」の謎 >

2012/03/04

作りたいもの

「プログラミングを学びたいんですけど、何から始めたらいいですか」みたいな質問を見ると ついつい「まず作りたいものをはっきりさせなよ、そしたらそれに必要な技術がわかるから」と 言いたくなってしまうのだけれど (過去にそんなふうに書いたかもしれない)、 さそうあきら氏のツイートを見て考え直した。

https://twitter.com/akirasaso/status/175226023133196288

「プロになる人は、皆描きたいものがある人で、描きたいものがない人は漫画家になれないのではないのですか」という質問を先日受けましたが、そんなことはないと思います。 むしろほとんどの漫画家は「描きたいものがわからない」ところから出発しているのだと思います。

https://twitter.com/akirasaso/status/175226626307657729

僕もデビューしてから悩みました。読み切りを何本書いても脈絡なく、統一感がない。自分はいったい何を描きたいんだろう・・・・・ でも無理にでも作品を重ねているうちに、自分のやれることと、自分のやりたいことが、だんだんとわかっていきました。

(モーニング島田編集長の、『「あきらめなければ夢は必ずかなう」ほど悪質な言説はない』に対するマンガ・アニメ業界人の反応 経由)

思い返して見れば、自分だってプログラミングを始めた頃は、作りたいものが具体的に あったわけじゃなかった。どっちかというと「自分の書いたプログラムが動くこと」そのものが 面白かったんだと思う。 そんで、「じゃあこうすればこう動くだろうか」「今度はこっちをこうしてみよう」 っていじってるうちに、だんだん勝手が分かってくる。 具体的に、じゃああれを作ってみよう、というアイディアが出てきたのはその後だったような。

既に出来上がってるものを見て何がどう動いてるかなんとなくわかる程度までいかないと、 「作りたいもの」のディテイルを具体的に頭の中で想像することもできないわけで、 その手前では「これを作りたい」という明確な目標が定められない。 この段階では、とにかく何か手を動かして、 何をどのくらいいじればどういったものが出来るっていう感触を得ないとならないんだろう。 (もちろん、「○○みたいなものを作りたい」っていうぼんやりした憧れは 持ってていいんだけど。じゃあ具体的に何をどうすればそれが出来るのか、ってとこまでは 最初はわからないはず。)

自分は普段はなるべく「まず目標を具体化して、それから手段を考える」ように してるけど、これは "Getting things done" するために一番効率が良いから そうしてるだけで、そうしなきゃいけないってものでもないんだよね。 というよりむしろ、放っておくと手段の方が面白くてそれが目的化しちゃうんで、 それを避けるために意識して目的指向を選んでるのかも。

仕事ではなく、getting things doneしないでも良い領域なら、 好きなだけ手段に溺れて構わないわけで。 むしろそういう領域では、手元にある手段を活かすための「作るべきネタ」を 普段から探し求めている。手段を使うために目的を選ぶという逆転。 どっかのブログや論文で面白いアルゴリズムを見れば それっとばかり実装してみるのも、結局はそういうことである。

Tags: Programming, ものつくり

Past comment(s)

(2012/03/04 16:48:49):

初見。とにかく他人の作品を丸ごと模写する。1や2じゃなく、30、50、100と。そしたら自然とやりたいものが見えてくる。 模写したものを売ったり、ネットに上げちゃ駄目だけどねw

shiro (2012/03/04 20:58:20):

プログラミングでも私の世代だと、最初は「雑誌に載ってたコードをとにかく打ち込んでみる」で始めた人多数だと思います。ただプログラミングに関しては、現在はむしろ情報がありすぎて何から手をつけて良いのか却ってわからないのかもしれない。

(び) (2012/03/05 01:56:30):

「プログラミングを学びたいんですけど、何から始めたらいいですか」みたいな質問が何となくムカつくのは、「試行錯誤が面倒くさいので正解を(正解に最短で到達する経路を)教えてください」と聞こえるからな気がします。わたしは少なくともそう。そして、いじわるでも何でもなくて、そんな経路はないに等しいし、人によっても大きく変わるんですよ、ということを教えてあげるほどの親切心がないので、結局放置して終わりになるという、ねw 「みなさんは、何からプログラミングを始めていったのですか?」という問いなら、きっとみんな大いに語ってくれるだろうにね。

shiro (2012/03/05 05:12:18):

まーそれもわかるんだけど、「(ピアノ|ギター)弾けるようになりたいんですけど、何から始めたらいいですか」っていう質問だったらどうですか? それだと「とりあえずこれだろ」って定番の経路があるような (まあ、どういうジャンルを弾きたいか、くらいは聞き返すかもしれないけど)。

「プログラミング」が指す世界が広すぎるのかも、とは思います。音楽で例えれば「何か楽器弾けるようになりたいんだけど、どうすればいいですか」って聞かれてる感じ。ちょっとそれだけじゃ答えようがない質問。

nobsun (2012/03/05 07:41:58):

「プログラミングを学びたいんですけど、何から始めたらいいですか」って悪くない質問のような気もしなくはない。すくなく「プログラミング」という対象と「学びたい」という欲求が語られているからね.多分,必ずしも,てっとり早く楽にと思っているわけではなくて(もしそう考えているなら聞き方ってものをもうすこし考えるんじゃないかなぁ.それなりに教えてもらえそうな聞き方をね.),プログラミングという言葉は知っているけれど,どういうことをすることかも判らない状況なんだろと思う.自分でやってみもしないで先に人に聞くなという感情も理解できるけど,臆面もなく聞いてしまえる根性(じゃないかもしれんが)もなかなかなものだと思う.まぁ.そうやって,聞き方を覚えるんだけどね.聞きたければ,オヤジほいほいを覚えればいいんだよ.いくらでも釣れるはず...なんてね.

(び) (2012/03/07 08:32:17):

クラシックだと、ちゃんとメソッドが(ある程度は)確立されているので、確かに「とりあえずこれだろ」があるかもしれない。学問としてのコンピュータサイエンスにもありそうな気がする。一方で、ロックミュージックなんかだと「とりあえず好きな音楽を耳コピしろ。以上。」だったりしますからね。プログラミングに直すと「イカしてると思うプログラムソースを写経しとけ」って話になるのかしらん。それはそれで充分なアドバイスかもしれませんね。

ただね。楽器にしろプログラミングにしろ、やりたい、と思う人なら、そんなアドバイスを求めるまでもなく手を出すんじゃないかと思うのですよ。で、わけもわからずひとしきりいじり回した末、行き詰まって問いを発する。理想論かもしれないけれど、あるいは感情論かもしれないけれど、そういう「熱」のようなものを件の問いからは感じないのですよね。そこが「試行錯誤が面倒くさいので正解を(正解に最短で到達する経路を)教えてください」の所以です。

shiro (2012/03/07 10:48:41):

「熱」が見えないというのはわかるなあ。ただまあ、「熱」がなきゃいかんのかというと、例えば「簡単な曲でいいから弾けたら楽しいだろうなあ」ってカジュアルな望みはそれはそれでアリだと思うし。

どっちかというとやっぱり、「経路は色々あるけれど人それぞれなので、貴方が今まで何をやってきてどっちに行きたいのかはっきりしないとアドバイスのしようがないよ」ってのが大きいのかも。アナロジーとしては楽器より「役者になりたいけど何をすればいいですか」が近いかもしれない。トレーニングの方法はきちんとしたものが色々あるけれど、自分から問題意識を持って個別に探しに行って考えるくらいでないと、他人からは何とも言いようがない。

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