2015/10/09
"Do not give other actors notes"
ハワイ大学でKeo Woolford氏による演技のクラスを取りはじめた。
「このクラスでのルール」として初回に提示された項目の中に、 "Do not give other actors notes" があった。give notesは日本でいう ダメ出しのことで、「他の役者にダメを出してはいけない」、あるいは 「役者同士でダメ出ししてはいけない」って感じだろうか。 Keoはあくまで「このクラスでは」と限定していたけれど、 このルールはクラスだけでなく実際の芝居の稽古や撮影の現場でも常識っぽい。
ニュアンスがちょっと微妙なんだけれども、役者同士でアイディアを出し合って、 何か作っていって演出に見せる、というのは全く問題がない。 ダメなのは「こうした方が良いよ」みたいに価値判断を入れたり、 「こうしてくれると自分がやりやすいんだけど」と注文をつけること。
ベースにあるのは、ある選択が良いかどうかを決めるのは演出の仕事であるという 線引きだろう。役者は材料をいくらでも提供できるけれど、全体のバランスを見て 決めるのは演出。また、役者はあらゆる所作について考え抜いて演出に持ってゆくものを 選んでいるはずなので、相手役に注文をつけるということは演出を差し置いて その役者の選択について判断をしちゃってることになる。
(ある時、私が出演している舞台に観客として観に来てくれた知り合いの演出家に、 何かアドバイス無い?と聞いたら「公演期間中に部外者はそういうことを役者には直接言わないものよ」と 言っていた。何かあるならその舞台の演出に言う、ということだろう。 ああ、判断を尊重するというのはそういうことか、と思った。)
日本での経験は学生劇団とその延長の社会人劇団だけで、その中では 「演出の仕事」「役者の仕事」という線引きをあまり意識してなかったように思う。 そのノリで役者友達の芝居を観に行って批評を求められると何やかんや注文つけてた 覚えもあるが、今思えば随分と思い上がったことをしていたのだな。
日本での現場の慣習がどうなのかについては十分な知識を持たないんだけれど、 いつも一緒にやっている劇団だとか、あるいはかつての映画制作会社のように 気心のしれた監督と主要役者のチームであれば、判断基準がある程度統一されているため、 こういうことにあまりシビアでないかもしれないな、という気はする。 というのも、今、『役者は一日にしてならず』という ベテラン役者さん達のインタビュー集を読んでて、 そこにしばしば現場で役者同士稽古をつける、みたいな話が出てくるので。 その前に『Actors at Work』という、 こちらはハリウッドやブロードウェイで活躍する役者さん達のインタビュー集を読んだのだけど、 現場で他の役者から教わった、という話は無かったように思う。
この2冊については、日米の業界事情の違いも見えて面白いのだけど、 それについては改めて整理して書いてみたい。
Tag: 芝居
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