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< AIPF2016 | λの起源、2つの説 >

2016/07/29

或るプログラマの遍歴、的な

芸術家や職人を志す人物を主人公に据えて、その「道」の探求の醍醐味を読者に 伝えるというジャンルがある。 予てよりプログラミングについてもそういった作品が出てこないものかと思っていた。 プログラマを主人公や主要人物に置く作品は決して少なくはないけれど、 人間関係のみに描写が割かれプログラミング自体は単なる頭脳労働か、 目的を達するための何やら不思議な技としてしか描かれないことがほとんどだ。 プログラマが感じている、プログラミング自体の醍醐味をうまく伝えられたら、 面白いものになるんじゃないか。

第六回立川文学賞入選作の斎藤準『√1』 (『立川文学VI』収録) は、 その点でかなりいい線を行ってると思った。

主人公はビデオゲーム、スポーツ、文学、音楽と次々にのめり込んだ後に、 とあるきっかけでソフトメーカーに就職し、プログラミングにも同型の魅力を見出す。 けれども現実の業務ではそれ以前の段階で足を取られて…

個人的な感想として、作者のプログラミングへの想い(あるべき理想形)がちょっと 全面に出すぎている気がしたが、 そのへんは読者のバックグラウンドによって感じ方が違うかもしれない。

実はストーリーとしてはこれからってとこで終わってて(物語論でいう3幕構成で言えば2幕前半まで)、 このあと主人公がどうなるかが知りたくなるんだけど、そう思うくらいに読ませるので 短篇としてはこういうのもありなのだろう。 3部作くらいで、この後の成長段階を読んでみたいと思う。

* * *

ところで、同じ書籍に収録されている大賞受賞作は演劇のオーディションを扱っているんだけど、 私の知る演劇の現場とはかけ離れていてちょっとびっくりした。 こちらの作者は劇作家だから、多少の誇張や単純化はあれ、描かれてるような現場も実際にあるのだろう。 演劇って世界でも場所によってそんだけ違うんだから、プログラミング業界だって 場所によってびっくりするくらいの違いがあってもおかしくはないね。

Tags: , Programming

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