2018/04/21
バンスリ買い足し検討
バンスリは12音全て出せるけれど、 主キーのダイアトニック以外は穴を部分的に塞ぐので安定しづらく、 楽器によって奏しやすいキーとそうでないキーがある。 今メインで使ってるG管(Sa=G4)だと、G majorとD majorが最も演奏しやすく、 C major、A major、E majorと次第に難しくなる。(2つフラット方向に離れたF major は主音が部分塞ぎになるのでかなり難しい。)
12調全てをなるべく少ない本数でカバーするとしたら、どういう組み合わせで揃えるのが良いだろうか。
一本で4つのキーをカバーする場合、circle of 5thsで考えれば:
- G管でG, D, A, C
- E♭管でE♭, B♭, F, A♭
- B管でB, F♯, D♭, E
この3本でいけそうだ。ただ、Bass E♭管はかなり長くて押さえるのが大変、 上のE♭管は逆に小さくてピッチを安定させるのが大変、 なのでそれでB♭やFといったよく使いそうな調をやるのはどうだろう。 あと、この組み合わせの4番め (G管のCとか) は音域的に制限がきつい。 1本で3つのキーをカバーするとしたら:
- G管でG, D, A
- E管でE, B, F♯
- D♭管でD♭, A♭, E♭
- B♭管でB♭, F, C
2つのキーだと:
- G管でG, D
- A管でA, E
- B管でB, F♯
- D♭管でD♭, A♭
- E♭管でE♭, B♭
- F管でF, C
Bass F管の響きが結構良さげだなので次に買うのはそれにしようかな、と考えていたのだけれど、 カバレッジを考えるといまいちな選択なのかも。 Bass E管は結構チャレンジだけど行ってみるかな。それだとフラット系が手薄になるので B♭管にも手を出してしまいそうだ。 ところでこの系列だと最初に買ったC管がどこにもはまらない。 初心者に良いということで買ったんだけど、最初をB♭管にしておけば良かったかもしれない。
2018/01/06
"Chains"と差別の構造
しばらく前に、子供が学校の読書課題でLaurie Halse Andersonの"Chains"という 本を借りてきたのだがこれがとても面白かった。
1776年、アメリカ独立戦争直前から、独立宣言を挟んで英国軍の反撃、 独立軍の再反撃までのニューヨークが主要な舞台。 主人公は13歳の黒人の少女で、奴隷の立場から見た白人間の争い、という視点がまず興味深い。 そして彼女が圧倒的な逆境にめげず自由を求めて道を切り開いてゆく冒険もの的な ストーリーも読ませる。
その逆境のポイントとなるのが、構造的な差別だ。
差別というのは、誰かが憎しみや蔑みを持って他の誰かを扱うことではない。 それは差別の表面的な症状のひとつにすぎない。 差別の本体は、「常識」や「規則」、「既得権益」あるいは「無知」という形で社会の中に深く埋め込まれている。 善意の人であってもその構造に抗うのは難しい。だが抗わないことが差別構造を温存させ、 ヘイトや不公正をのさばらせる土壌を作る。
(以下、"Chains"の内容に触れるので、ネタバレなしで読みたい方はここでストップ!)
* * *
主人公Isabelの両親は騙されてアメリカ大陸のコロニーに連れてこられ、奴隷にさせられる。 Isabelと妹は生まれながらに奴隷だった。早くに父も母も亡くすが、 その頃仕えていた老婦人が親切な人で、Isabelに読み書きを教え、 「Isabelと妹を自由にする」という遺言状も残す。 (所有者の許可があれば奴隷は自由人になることができた)。
しかし老婦人が亡くなった後、甥にあたる男が現れて後始末を急がせ、遺言状の件がうやむやになる。 Isabelは男や牧師に訴えるが、取り合ってもらえない。 遺言状を読んだ、と言っても、そもそも読めるということを信じてもらえない。 二人は男に連れられ、 奴隷としてニューヨークに屋敷を持つ英国忠誠派(Loyalist)の夫妻に売り飛ばされる。
この新しい主人の妻Ruthがわかりやすい悪役でIsabelにひどく当たるわけなんだけど、 Isabelの前に障害として立ちふさがるのはこの女主人ではないのだ。
例えば主人の叔母にあたるLady Seymourという人がいる。 上流階級だけど優しい人で奴隷にも親切。事故があって伏せってしまうんだけど、 その後でIsabelに「あなたを買い取ろうと思っていたのよ。 うちに置いておけばRuthが手を出せないからと思って」と漏らす。
そこでIsabelはショックを受けるんだな。
「なぜ、自由にすると言ってくれないのか」
あるいは、妹と引き離された時に、ちょっと関わりがあった独立派の軍の司令官に直訴にゆくのだけれど、 そこに女主人Ruthも現れて、司令官は忠誠派の大物の妻との対立を避け、 Isabelの言い分は聞き届けられない。
英国軍が勢力を盛り返してマンハッタンに上陸して来る時に、 「忠誠派に協力した奴隷は自由になれる」という噂を聞いてIsabelは上陸部隊の元に走る。 けれどもIsabelの主人が忠誠派と聞いて、部隊長はIsabelの境遇に同情しつつも、 「忠誠派の財産権を侵害することはできない。法を守らなければ秩序は維持できない。 自由になれるのは反乱分子である独立派の主人に所有されていた奴隷だけだ。」と言う。
つまり、Ruth以外の白人は概ね善良で、法に忠実で、自分の理想のために動ける人なんだけれど、 「奴隷は主人の所有物」という観念から離れられないため、Isabelの道を塞いでしまう。
Isabelはトマス・ペインの『Common Sense』を手に入れこっそり読む。 自由と人の権利を説く同書は独立派の理論的支柱となった。 けれどもIsabelは思うのだ。独立派に自由を求める権利があるなら、 奴隷にもその権利があるはずではないか。
誰の助けも得られないと絶望の淵に立った時、Isabelは自分で自分を救う大胆な行動に出る。
* * *
Lady Seymourの「私が買い取って手元に置いておけばひどい目にあわないで済む」という言葉は 善意から出たものだし、状況を少しでも改善するという点では確かに有益なアクションだ。 けれどもその考えに囚われている限り、つまり「自由にする」という 発想が出てこない限り、差別構造は温存される。
冒頭に出てきた牧師も、奴隷には親切な人だった。けれども 「奴隷が読み書きを覚えることは社会秩序を乱す」と考えていた。
Isabelの境遇に同情しつつ、 差別構造という大きな「仕組み」に従わねばならないと考える善良な人々。
Ruthのような悪役がいなくなれば差別は無くなるのか。 いや、構造が温存される限り、Ruthのような人々は自然に現れてしまう。 わかりやすい差別主義者は原因ではなく、結果なのだ。
2017/12/21
らむ太語録 (circa 2013)
古いメモを見返してたら下書きのままpublishしてないエントリがあった。 多分3-4年前だと思う。らむ太8-9歳。
ある朝
- かみさん: ほらもう起きなさい。朝ご飯食べてる時間無くなるよ。
- らむ太: (目を閉じたまま)今忙しいんだよ
- かみさん: 何が忙しいの。寝てるじゃない。
- らむ太: (目を閉じたまま)羊を数えるのに忙しいんだよ
- かみさん: 羊は寝る前に数えるんでしょ。
- らむ太: (目を閉じたまま逆ギレ)違うよ! 眠い人が数えるんだよ!
風呂場にて
かみさんがらむ太に靴下を自分で洗う練習をさせていたのだが、 らむ太は嫌で嫌でしょうがない。
- らむ太: (べそかきながら)これぼくの靴下じゃないよぉ!
- かみさん: 何言ってるの。うちにこんな小さな靴下履ける人他にいる?
- らむ太: (べそかきながら)これ父さんが小さいときの靴下だよぉ!
Tag: 生活
2017/10/13
第3オクターブ
バンスリの標準的な音域は2オクターブなんだけどもうちょい出てくれると吹ける曲が増える。上の方の運指は楽器により変わってくるそうで、特に決まった運指がない。 手持ちのG管 (Sa=G, 最低音D4) でいろいろ試してみている。
Pa (D6) ◯ ● ● ● ● ● 気を抜くと低くなる Dha(E6) ◑ ● ◯ ◯ ◯ ● かなり低めになりがち Ni (F#6) ◑ ◯ ● ● ◯ ● かなり高め、不安定 Sa (G6) ◑ ◯ ● ◯ ◯ ● 低めになりがち、不安定 Re (A6) ● ● ◯ ◯ ● ◯ 出るときは出る。不安定
上のPaまではそこそこ当てられるようになった。Dhaは外すことが多いけどこれを使いたい曲がひとつあるので練習中。Ni以上はまだ偶発的にしか出せない。
同じようにシンプルな楽器でもケーナは3オクターブ出るみたいなんだよな。どういう差があるんだろう。一般に長さ/太さ比が高いほうが上のレジスターが出しやすいってのはあるみたいだが、バンスリとケーナはその比はあまり違わないっぽい。
2017/09/02
宿題は禁止に値するのか
最近、複数ルートでこんな記事がシェアされてきた。 どの新聞雑誌か、またいつのものかは不明。
米教授研究 小中学生の「宿題」成績向上に効果なし
「宿題は禁止に値する」
...米国デューク大学のハリス・クーパー教授は、 「小中学生の宿題はほとんど効果がない。むしろ悪影響を与える」 という研究成果を発表した。 クーパー教授は200にも及ぶ研究結果を分析、 学習に及ぼす宿題の効果がプラスになるのは年齢により、 小学生の年齢では宿題が成績向上につながる効果は認められず、 中学生の年齢でも効果はほとんどなかったという。 宿題のプラス効果がやっと現れるのは高校生の年齢になってからで、 それでも1日2時間以上の宿題は逆に成績を下げることがわかった。 クーパー教授は、宿題よりも子供が「楽しい」と思う時間を 増やすことの方が成績向上につながるとし、「小学生の宿題は禁止に値する」と述べている …
ちょっと違和感を覚えたので、元研究を探してみた。 Duke大のHarris Cooper教授は確かに宿題の効果に対する研究を続けている。 最も大きなものは2006年に発表された、1987-2003年に渡る調査を分析したメタアナリシスだ。 被引用も多い。
- Harris Cooper, Jorgianne Civey Robinson, and Erika A. Patall: Does Homework Improve Academic Achievement? A Synthesis of Research, 1987–2003. Review of Educational Research Spring 2006, Vol. 76, No. 1, pp. 1–62. http://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.3102/00346543076001001 (PDF)
- Duke大の解説記事 https://today.duke.edu/2006/03/homework.html
しかし、アブストや解説記事によれば、 この研究は「宿題には効果がある」という結果を示しているのだ (より正確には、「宿題と成績には正の相関が見られる」)。 もちろんやりすぎは良くないということで、 Cooper教授によれば宿題は「学年x10分」が最適値の目安という。 つまり小学1年生で10分、2年生で20分…高校最終学年(12年生)で2時間、という具合だ。 宿題の是非を論じる一般記事にも、この結果は宿題の必要性を示すものとしてしばしば言及されている。
日本語記事は「1日2時間」には言及しているが、なんだか論調が違う。 2006年の結果を覆す新しい結果が出たのだろうか?
といったことをfacebookにコメントしたら、 友人の高階経啓さんから「これが元ネタの記事では」という情報が。
この2016年のSalon.comの記事ではCooper教授の2006年の調査を宿題の効果を否定する根拠といて引いている。 構成など、たしかに日本語記事と類似していて、これが元ネタということはあり得る。
但し重要な点として、日本語記事にある「宿題は禁止に値する」という文は、Salon.comでは筆者の意見 ("Elementary school kids deserve a ban on homework.") であって、 Cooper教授の発言ではない。
Cooper教授もどこかでそういった発言をしたのだろうか? 「学年x10分ルール」とは相反するので、どこかで意見を変えたことになる。
Cooper教授は調査結果とそれに基づく提言を一般にもわかりやすい書籍にしている ("The Battle Over Homework: Common Ground for Administrators, Teachers, and Parents")。 最新版(第3版)は2016年のもので、Kindle版を買ってざっと目を通してみたが、 2006年の調査と相反するような話は出てこなかった。 Cooper教授が「宿題は禁止」と言い出すとは考えにくい。 この1年で考えを変えたという可能性は排除できないが。
Salon.comの記事では、Cooper教授の調査について、 "No evidence of academic benefit at the elementary level. It did, however, find a negative impact on children’s attitudes toward school." (「小学生では学業上の利点を示す証拠はみつけられなかった。 しかし、学校に対する児童の態度の点で負の影響が認められた」とある)
これは間違いではなく、 確かに小学生(1-6学年)においては調査結果の相関は正も負もあり、 相関はゼロから有意に大きいとは言えない (論文p.43)。 また、学校への態度の負の影響を示す調査結果もあるにはあるのだが、 こちらも調査間でばらついている。
しかしCooper教授の論文はこれを以って小学生の宿題に意味は無いとは結論づけていない。 標準テスト以外の成績も考慮した場合の調査はいずれも、小学生であっても正の効果を見ている(p.28)。 教授は標準テストで正の相関が出にくい原因について、 ひとつには小学生の宿題は直接の成績向上よりも 勉強習慣をつけることを目的に出されていること、 また、成績の低い者ほど宿題に時間を費やすことが、 時間と標準テスト成績に負の相関をもたらすことで打ち消されている可能性、などを挙げている。
なので、Salon.comの記事は、宿題否定論者である著者がCooper論文の都合の良いところを つまみ食いしたのでは、という印象が拭えない。
日本語記事ではさらに「中学生の年齢でも効果はほとんどなかったという」とあるが、 これは明白にCooper教授の結果と相反する。 "The Battle Over Homework: Common Ground for Administrators, Teachers, and Parents" からの引用:
Cooper教授がごく最近、それまでの結果を覆す新たな結果を得た、 という可能性はゼロではない、という留保をつけておくが、 この日本語記事は一次情報に当たらず、 さらに二次情報をまとめる際に読み違えをしたという可能性があると考える。
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