2006/09/12
オープンソースマガジン2006年10月号の特集記事に まつもとさん、 住井さんと並んで 記事を書かせてもらった。
今回はあんまり内容について考えないで引き受けてしまって、 当初ぼんやりと考えていたネタを発展させられなくて、 無理矢理着地させたような記事になってしまった。 クロージャとオブジェクトの関係については住井さんの方が フォーマルな議論に詳しそうなので、ツッコミが入ることを密かに 期待していたりする。
後から振り返れば、プログラムの二重性 (プログラムは実装である と同時に仕様記述である) を柱に持ってきた方が良かったかも。 これはSteeleが "Lambda: The Ultimate Imperative" と "Lambda: The Ultimate Declarative" で示唆しているけれど、 Jonathan Reesが うまいこと言っている。
The ideal program is a pun, simultaneously declarative and imperative. When a human first reads it, it's understood declaratively, and only then, when someone (human or computer) cares about running it, is it understood imperatively.
Tag: Publication
2006/08/26
もう昨日のことだが、LL Ringの Language UpdateでSchemeについて喋らせてもらった。 スタッフの皆様、お疲れさまです。
使ったのはSkype Video。時々接続が不安定になって音がぶちぶち 切れたりするのだけれど、本番ではわりとスムースにいってくれたようだ。 10年前、Square USAに入ったら、会議室にTV会議システムがあって 東京の本社との間で会議できるようになってたんだけど、 何かと面倒で滅多に使わなかったような気がする。 ビットレートが違うとはいえ、PCから手軽に映像・音声でコミュニケート できるのはやっぱ大した進歩だよなあ。
発表で、「今日の言語の中ではLispに次いで2番目に古い」とか言ったんだけど Forthを失念してた。失敬。
入場? のBGMはラヴェルの Concerto pour la main gauche。 名前つながりで。
Tag: Conference
2006/08/20
一人暮らしの人はもちろん、フルタイム共働きで遅くまで働いている人も多くなってる昨今、 お役所や銀行や郵便局などの窓口が平日の9時〜5時ごろまで(+土曜は12時まで) しか開いてないというシステムはほんと困りものである。
米国はこの手の用事のほとんどが電話か手紙で済んでしまう。 決済手段として個人小切手が普及していることが大きいのだろう。 料金の支払いも、自分の口座への預金も、全て小切手を送るだけで済む。 私はふたつの銀行を使っているけど、口座間の金の移動も小切手だ。 手数料かからないし。電信払込って全く使わない。
あとは電話。込み入った話などは英語のハンデもあるから対面の方がやりやすい とも思うんだが、何でも「とりあえず電話してくれ」なんだよね。 時には窓口の人に処理の権限が無いらしく、わざわざ窓口に行って 頼んでも脇の電話を示されて「あそこからコールセンターにかけてくれ」と 言われることもある。
たぶんそんなだから、ネットによる電子的な手続きも普及しやすいんだろうと思う。 日本の役所の電子手続きって電子証明書取れだのカードリーダーがどうだの あまりに面倒そうで、あれじゃ普及しないだろう。対面での処理の信頼性があまりに 高くて、それと同等のことを実現しようとするから大変なんだろう。 こっちは逆にネット上の手続きの本人確認とか心配になるくらいいいかげんなんだが、 そもそも人が介在しても間違いはなんぼでも起こるんで、それは折込み済みで 訂正機構でカバー、という考えなんだろう。
それでも依然として困るのは荷物の受け取りだ。 郵便局は不在通知を持ってけば朝6時から対応してくれるのだけれど、 家具の配送とかは待たざるを得ない。これがえらくいいかげんで 午後来るって行っといて夕方になって「今日は遅くなっちゃったからまた明日」 なんてふざけた電話がかかってくることも覚悟しとかないとならない。
Tag: 生活
2006/08/19
Y Combinatorの支援を受けていた、 Ruby on Railsで構築されたwebベースカレンダーソフトkikoの資産が オークション に出されている。Google Calendarが出てきて、競争するのはしんどいから撤退するって ことらしい。 Paul Grahamがblogに エントリを上げている。 要点だけ抄訳。
- これがWeb 2.0の終焉を示唆するとか騒いでるひともいるが、そんなことはない。
- Kikoのユーザの多くは既にGmailアドレスを持っており、Google Calendarが 出た時点でそうとうのユーザがそっちに流れた。
- Justinが学んだこと について書いている。余分なプロジェクトに力を注ぎすぎたと。 でも我々がやられたのは、Google CalendarとGmailの統合だった。 kikoには、競争するためにgmailを書くなんてことはできなかったからね。
- これがwebスタートアップをくじくことになるとは思わないけれど、 ひとつ重要な点がある。これは、GoogleがMicrosoft Office効果によって 得をした最初の例になるかもしれない。80年代から90年代にかけて、Microsoftは 個々のアプリ毎の競合相手を、アプリを緊密に連携させることでやっつけてきた。 webアプリでもこの戦略はいけるようだ。
- GoogleはMicrosoftよりも危険かもしれない。技術に関心のあるユーザが 好むからだ。Microsoftの新製品のユーザは最も技術に関心のない、 プレインストールされたソフトしか使わないような層だけど、 Googleと競争しようとしたら、本来ならスタートアップの味方である はずのアーリーアダプターの層を取り合うことになる。
- 大手も大変だ。YahooやMSNやAOLがクールなソフトをローンチしようと したって、クールなソフトを好むユーザはそういうサイトをもともと見にゆかない。
- スタートアップは、Googleの邪魔にならないところを狙うのがよさそうだ。
- いい知らせもある。Googleの進路は案外狭いんだ。少なくとも今までは、 Googleは自分達の社員が使いたがるようなものを作るのが得意なようだ。 自社内でベータテストを、時には何年もかけてやっているのだから。 賢いハッカーが仕事で使いたいような製品なら、この方法はうまくいく。 でもそうでなかったら? 検索とメールサービスは得意だけれど、 最初に手をつけたにもかかわらずYouTubeにはなれなかった。 likebetterみたいなものは考えもしないだろう。 (訳注:likebetterは今期のSummer Founder Programで作られたサイト)。
- もうひとつ、webスタートアップに励みになる点がある。 身軽なら、失敗してもたいしたことはない。 Kikoの開発につぎこんだのは、せいぜい一級のプログラマ一人の半年分のサラリーだ。 コードを売ることでその一部は回収できるだろうしね。Kikoは創立者以外に 一人しか雇っていなかったから。だからバブルの頃にあったようなひどい倒産劇には ならない。彼らは頑張って、良いものを作ったけれど、流れ弾に当たったんだ。 じゃあ、また挑戦すればいい。Y Combinatorは昨日、彼らの新しいアイディアに 投資したよ。
- それはGoogleの社員が仕事で使いそうにないものだ。 いや、たぶん私の知る限り、もっとも常識外れのベンチャーだ。 彼らがリスクを取る欲求を失わなかったのは良いことだ。
ところでオークションの今のhigh bidderがogijunってなってるんだけど、 ogijunさんですか?
Tags: YCombinator, PaulGraham
2006/08/07
オープンソースマガジン2006年6月号に掲載された、「ハッカー養成塾!」の 元原稿を掲載しました → WiLiKi:Shiro:OpenSourceMagazine0606
Tag: Publication
