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2017/05/19

子供と読む児童文学 (小5編)

らむ太の学校で今年度に出た課題図書のうち、印象に残ったもの。 (小3〜小4のはこちら)


My Side of the Mountain (Jay Craighead George)

13歳のSamは9人兄弟の長子。ニューヨークの狭苦しいアパートでの暮らしにうんざりして、 本で自然の中で生きるための知識を蓄え、家出して先祖が住んでいたという山に向かう。 大木のうろを住処にし、一人で一年以上サバイバルする話。 食用の植物や実の採取に始まり、 罠を仕掛けて動物を狩りちゃんと捌いて皮や骨まで利用したりといった描写がかなり具体的。

こういう冒険物は自分も子供の頃大好きだった。 ただ、今読んでみると、まあ大きな病気や怪我をしなくてよかったね、 的なシニカルな見方もしてしまう。

らむ太的にも、同じサバイバルものとしては次のHatchetの方が響いた様子。


Hatchet (Gary Paulsen)

13歳のBrianは、両親が離婚して母親と暮らす。 しかし父親に会いに行くため載った軽飛行機がカナダの森の中の湖に墜落。 生き残ったBrianの手元に残されたのは手斧のみ。一人生き抜くための冒険が始まる。

朝晩の猛烈な蚊の襲来に悩まされたり、苦労して作ったシェルターが嵐でばらばらになったり、 くじけて一時は死を考えたり、 "My Side of the Mountain"に比べてこちらの方が状況的にはリアル。 困難を乗り越える度にBrianが精神的に成長してゆくのが描写からわかる。 自立することで、両親の選択を理解するようにもなる。

最も困難な挑戦を乗り越えた時に唐突に訪れるエンディングも、 時として皮肉な現実を映しているようで秀逸。


Stargirl (Jerry Spinelli)

16歳のLeoが通うアリゾナの高校に、「空気を読まない」女の子が転校してくる。 Leoは型にはまらない彼女にどうしようもなく惹かれるけれど、 学校の中で浮くことも恐れて、板ばさみになり、ほろ苦い結末を迎える。

小5男子にはちと早いんじゃ? と思わなくもなかったけどこういうのはわかっても 親にはその様子を見せないだろうかららむ太がどう感じていたかはよくわからない。

あとStargirlは街中の人の動向を新聞などで調べて、 こっそり誕生日のプレゼントやお見舞いを届けたりしてるんだが、 一歩間違うとストーカーだよなあ。と、そう思ってしまうこと自体が 「こちら側」の社会性にとらわれていることの証左なんだろうけど。


The Egypt Game (Zilpha Keatley Snyder)

カリフォルニアの小さな街、小学5年生のMelanieは、 ハリウッドから引っ越してきたというAprilと、 古道具屋の裏庭で「エジプトごっこ」を始める。 けれども遊びのはずの神託に実際にメッセージが届けられたり、 街で子供が殺される事件が起きたりと、 危険な影がしのび寄って来る。

女の子が主人公だとノリが悪いらむ太。 途中で男の子がグループに加わって多少興味を惹かれたようだ。

謎めいた出来事は、全部ちゃんと伏線が引かれていて綺麗に解決される。


Detectives in Togas (Henry Winterfeld)

古代ローマを舞台に、少年達が濡れ衣を着せられた友人の無実を証明するために奔走する。

当時の風俗の描写が面白い。人名は読みにくいけど。 歴史的に重要な史実との絡みはそれほどないが、 当時のローマ市民とギリシャ出身者の関係の描写も興味深かった。

らむ太的にはいろんな性格の男の子が集まったグループのドタバタがうけていた。 最初の方の描写が後で謎を解決する手がかりになったりするので注意深く読む必要がある。


Holes (Louis Sachar)

いじめられっ子のStanley、拾ったスニーカーに窃盗の疑いをかけられ、 矯正施設に送られてしまう。 そこでは少年達に、毎日干上がった湖の底に穴を掘る、という作業が課せられるのであった。 「人格矯正のため」と言われる作業だが、施設長は何かを探しているようでもある。

強制労働からの脱出とサバイバルといったアクションに、 湖をめぐる伝説、そして発端となった悲恋の物語も絡み、 様々な要素が結末に向かって一気に収斂する。 先が気になって止められない。

らむ太的には、物語の時系列が前後するところで混乱する様子だったので そこだけフォローしたら後は楽しんでいた。


The Mostly True Adventures Of Homer P. Figg (Rodman Philbrick)

アメリカ南北戦争の時代。親を亡くし非情な叔父の下でこき使われる兄弟だが、 叔父の謀略で兄が戦争に取られてしまう。 それを助けるため弟のHomerが波乱万丈の冒険に。

Homerは大ホラ吹きで話しているとどんどん尾鰭がついてゆく。 それは相手にもバレてるんだけど、 互いに信用できない世の中では口八丁で渡って行く技能も重要だよなと。 飄々としたHomerのキャラクタがおもしろい。

舞台はカナダ国境に近いメイン州の田舎に始まり、ポートランド、 ニューヨークを経てペンシルベニアへ。 らむ太と地図を見ながら読んだ。


追記(2017/05/29 12:32:23 UTC): 学校は来週で終わりでもういつものbook reportは無いんだけど、 らむ太が借りてきた本がえらく面白かったので追加でメモ。

The True Confessions of Charlotte Doyle (Avi)

1832年、イギリスからアメリカまで貨物帆船の唯一の旅客として旅することになった13歳の少女が経験する冒険物語。船員の反乱、信頼と裏切り、嵐の夜の殺人事件、容疑をかけられた主人公の裁判、それに、階級社会の閉塞感とそこからの脱出という背景もあって、色々盛りだくさん。

子供の頃、帆船の旅の物語が大好きで、『ニワトリ号一番のり』とか繰り返し読んでた。この本はさらに殺人事件が絡んで、登場人物それぞれの表の顔と裏の顔、言っていることが真実か嘘か、それを互いが読み合って、というなかなかに凝ったストーリーが子供にもわかりやすく整理されて提示され、これ子供の時に読んでたら夢中になっただろうなあ。


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