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< YouTubeの著作権クレーム、その2 | ピアノレッスン102回目 >

2013/07/15

失敗経験値 / スキルの指数

ピアノに関して、人前での失敗経験値がまだ足りないので経験値を稼ぐべく子供に混じって発表会。

  • Bach: Prelude and Fugue in C♯ major, WTC I
    • プレリュードが珍しくほとんどミスなしで行ったのでほっとしたらフーガの途中でわからなくなった。でたらめに弾いてつなげたけど後で録音を聞いたらでたらめ過ぎて吹いた。止まらなかったのは進歩だが、脱線しそうになったときにもっと余裕を持って対応するのが課題。
  • Scriabin: Sonata No.4 Op.30
    • 第一楽章から第二楽章半ばまではわりと調子良かった。しかしこないだのコンサートで再現部ではまったので、再現部が近づくにつれだんだん緊張してきて、展開部最後の右手4連符のところでわけわかんなくなった。何とか止まらずに続けたけど録音を聞いたらやっぱりでたらめすぎ。まあ前回のように仕切り直しをしなくて済んだという点では進歩だな。

YouTubeにエミール・ギレリスのScriabin 4番があるんだけど、 展開部の右手4連や再現部でやっぱりわけわかんなくなってるとこがあって、 それでもそれをものともせずに演奏を強行しててすごい。 失敗はリカバー次第なんだなということがよくわかる。

★ ★ ★

こないだ、スキルの差について、レベルが一段上がるにつれスキルは一定量上がるのではなく一桁上がるんじゃないかってなことを書いたけど (これ)、それに関連してこんなことを思った。

ある一つの曲について、こういうレベルがあるとする。

  • (A) 自分だけで弾いてて、一応楽譜は追えて最後まで弾けるかなって程度
  • (B) ミスはあるけど止まったり弾き直しするほどではなく、録音して聞かせられるかな程度
  • (C) 人前で弾いてあぶなっかしくない程度(多少のミスはあっても気にならない程度)

この場合、AとBのスキル差が10倍くらい、BとCのスキル差がやっぱり10倍くらいになるんじゃないか。 10倍というのははなはだ感覚的なものなんだけど、まあ5倍よりは大きくて20倍よりは小さいとか そのくらいのオーダー。

例えば、数回〜10回くらい録音して、そのうち1回くらいまあ人に聞かせられるかなって 演奏ができれば、Bのレベルだ。私がYouTubeにあげてるのも最近はだいたい5〜6テイクしてる。 10回弾いてもだめだとまだ機が熟して無いかなって感じ。 これが、Cのレベルでは1回で確実に人に聞かせられる演奏にしなければならない。これだけ考えても 一桁の差はある。

録音もせずにただ好きなように弾いてる時は、失敗したことは都合よく忘れちゃって、 「5回前に弾いてうまくいった前半部分」と「今弾いてうまくいった後半部分」の記憶が つながってなんか弾けてる気になっちゃう。録音してみるとそれがよくわかる。 なのでAとBの差もやっぱり一桁くらい。

肝心なのは指数的に難しくなるってことで、 これはつまり、AからBに至るのにやっていた練習と同じことをやってCに至ろうとしても 10倍の時間/労力がかかるってことだ。それは物理的に無理。

レベルが一段上がるごとに指数的に難しくなるのなら、練習方法も指数的に効率を 上げてかないと追いつけないことになる。

多分、何にでも言えることで、上級者のやってる練習の1時間は、その密度というか効率において、 中級者の10時間、初級者の100時間に相当する、みたいなスケールがあるんじゃなかろうか。

Tag: Piano

Past comment(s)

まるこまる (2013/07/17 01:07:45):

発表会、お疲れ様でした。 スクリャービンの4番のソナタは、私もウィーンの国立音大の入試で準備したのですが、やはり難曲ですよね。2楽章は音が多くて、それを聞いている人に分かるように上手く処理して、速いテンポで乗って弾けるようになるまでには、相当練習を積さねないと、と思いました。(結局練習不足で、本番で当たらなくてホッとしたのです。好きな曲ではありますが。)

 ところで今、小、中学生の生徒がコンクールに挑戦しているので、この間ちょっと聞きに行きましたが、初級レベルの曲でも、「とりあえず音が間違えずに弾けるようになった」→「よく響く曲にふさわしい音で細かいところまで表現が練られている」、というところまで、様々なレベルの演奏が聞けました。よく弾けている子は、やはり皆な相当量の練習を積んできていると思われます。話によると子供でもコンクール前は8時間~10時間するという子もいるらしく、全く恐ろしい!でもプロになった人は大抵そういう長年の練習の蓄積があるから、短い練習で多くのことが処理できるのでしょうね。  

shiro (2013/07/17 09:08:50):

まるこまるさん、お久しぶり。Scriabin 4番は、一生練習しつづけることになりそうです。

先月、ハワイでピアノフェスティバルがあり、アマチュア枠があって参加してきました。みんなただただピアノが好きなんだなあ、というのがわかってなんだかとても嬉しかったです。

よたろ (2013/08/05 06:19:51):

>10回弾いてもだめだとまだ機が熟して無いかなって感じ。

10回とも同じところでミスるなら、仰せのとおりだと思いますが、毎回ミスル処が違うなら、録音切り貼りすればパーペキな音源になるわけで、愚民からカネとって配布して良いレベルだと思います。

shiro (2013/08/05 06:42:32):

実際、プロでも録音音源では切り貼りする人が多いそうですし (出典: チャールズ・ローゼン『ピアノ・ノート』)、映画のようなメディアと対比すれば、切り貼りの過程を含めて作品創りとみなすこともできるでしょうね。なんか私自身は一発で出来ないと気持ちよくないよなあ、というライブ信仰みたいなものがあるんですが、単なる思い込みかもしれません。

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