Island Life

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2008/03/16

砂糖菓子と死体

日本に来るとつい本屋に入り浸りになってしまう。きりが無いので衝動買いは 避けているのだが、気がつくと本が増えている…

ネットで評判を見てずっと気になっていた『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだ。良かった。個人的には星5つ。 ただ、読んでて痛い話ではあるので手放しで人に薦めるのははばかられる感じ。

私はこれを「子供が現実と闘って、生き延びたり生き延びられなかったりする話」と読んだ のだけれど、これはスティーヴン・キングの"The Body" (『スタンド・バイ・ミー』)と同じだ。 『砂糖菓子〜』は13歳の女の子。『スタンド・バイ・ミー』は12歳の男の子。 どちらも彼らを守ってくれるべき人々がそうしてくれなくて、 そのままでいたら溺れ死んでしまいそうなのを、彼らは自分達の力だけで 生き延びようともがかなくちゃならない。 で、どちらも結局生き延びられた子供だけが大人になる。 (背景となる家庭事情は『砂糖菓子〜』の方が切迫しているけど、これは60年代アメリカと 現代日本との違いかな。現代アメリカが舞台ならやっぱりかなり切迫したものになりそうだ。)

興味深い違いは、「実弾」と「砂糖菓子」の役割の差だ。 『砂糖菓子〜』では、実弾を探すなぎさは藻屑の放つファンタジーを効き目のない砂糖菓子と 評する (そして、生き延びたもう一人は文字通りの実弾を撃つようになる)。 『スタンド・バイ・ミー』では逆で、文字通りの実弾は一時的な解決でしかなく、 本当にサバイブするための実弾はゴーディの持つ言葉、物語る力であることを クリスが見抜く。 『砂糖菓子〜』の読後感がレクイエムみたいなのに対して、『スタンド・バイ・ミー』の それにかすかな希望があるのはそのせいだろうか。

(なお『スタンド・バイ・ミー』の文庫版を書店で見てみたが 翻訳の問題は 直ってなかった。残念なことだ。)

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