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< 季節外れのflu | ピアノレッスン49回目 >

2012/05/14

過去形

条件法の誕生 - 猫を償うに猫をもってせよ

 「こちらでよろしかったですか?」式の物言いも、日本語がおかしいと言われつつ定着しつつある。

 しかし、もしかしたらこれは、日本語における条件法誕生の瞬間ではないのか。

過去形のニュアンス - ことばを鍛え、思考を磨く

ところで、間違った日本語のやり玉に挙げられることの多い、マニュアル的接客用語の一つに「○○でよろしかったでしょうか?」というのがありますね。 なんで過去形やねん!...というアレです。 どうやら「過去形にする=敬語、丁寧語になる」と思っている若者が多そうな気がします。

小学生に国語を教えているときも同じような例に出会うことがあります。 「行きます」にすべきところを「行く」と答えた子に、「丁寧な言い方にして」とアドバイスすると「行った」になることが少なくないのです。 中学生でもそういうことが....。

ひょっとして、英語での表現法が日本語にも及び始めているのでしょうか?

おもしろい。

英語で丁寧表現といえばwouldやcouldを使うのが普通だけれど、最近気になってることとして、 コーヒーショップなどでクレジットカードで支払いをした時に

"Did you need a receipt?"

と聞かれることがある (最近は小額の支払いはサインレスで済むので、 要らないといえば紙を全く使わない)。 レシートが欲しいかどうかは「今」の話なのになんで過去形で聞くのかなあ、カードを出した時点での意志を聞いてるのかなあ、などと思ってたんだけどこれも丁寧表現の一種なのだろうか。

★ ★ ★

(追記2012/05/15 19:03:07 UTC) こんな意見も:

https://twitter.com/dico_leque/status/202334367756988417

この手のは過去形ではなく、古文で「今はと見果てつや」と完了形で言う類のではないかと思っている。「これで*確かに*よろしいでしょうか」という念押し

そういや日本語にはもともと過去形というのは無くて、完了/非完了の「相」だけだったとかいう 話も聞いたことがあるな。完了形が一つの応用として過去の表現にも使われる、という。 そうだとすれば「過去形だから」ではなく「完了形だから」を出発点にした方が的確なのかもしれん。

Tags: 言語, 英語

Past comment(s)

ayatoy (2012/05/15 11:52:52):

店員は客の過去を拾って確認するだけの存在って感じなんでしょうか。客の主体性を阻害しない配慮というか。一歩下がって付いていく秘書みたいな。対して、強面のラーメン屋とか威圧的な洋服屋(みたいな接客の手法)は客に未来を強制してたりして。

shiro (2012/05/15 19:07:25):

英語でのこの場合の過去形がどこから来てるのかはわからないですが、丁寧表現の一種だとすればあくまで形式的なもので時間の感覚は付随していないんじゃないかと思います。

とおる。 (2012/05/16 00:25:40):

日本語の丁寧表現で過去形にするのは、何となくですが、「過去の確定した事実」ということにすることで、自分の影響というか責任範囲を超えるから、何か問題があっても知らないよ、っていう言い訳のようなニュアンスを感じます。

あと、似たものとして、合計の値段を言うのに単に「○○円です」といわず「○○円になります」みたいに言うのもありますけど、これも責任逃れのように聞こえます。私が決めたんじゃなくて、計算した結果こうなったんですから文句言うなよ、みたいな。

日本語の本来の丁寧な表現は、「〜られる」という受け身形と同じなのも面白いですよね。意味上の主語をわざとぼかしているような感じ。だから最近はこの受け身と尊敬を区別するためのら抜き表現が問題になったりもしてますけど。 あと、昔の日本語には已然形というのがあって、これは完了形みたいな意味合いらしいですけど、これがなぜか現代では仮定形として使われているのも、なんか、面白いなぁと思います。

shiro (2012/05/18 07:05:40):

「○○円になります」かあ。でも英語でも無生物を主語にして "That makes ..." とか言いますね。

日本語の方が自発表現を多用したりって表面的な特徴はありますが、都合の悪い時に自分を主体から外すとかそういうより深いところの傾向って、日本語でも英語でもあまり変わらないなあと感じることは良くあります。

ただ、英語でそれをやると明らかに「悪文」になってしまうのが、日本語だと案外話を逸らしつつなんとなく美文っぽくまとめられちゃう気がするのが違いかも。でもそれは自分が日本語ネイティブだからそう感じられるだけかもしれない。

T.Watanabe (2012/05/19 03:58:35):

これは本で読んだ受け売りなのですが、英語の過去形は単に過去の出来事を表しているだけでなく現在との"距離感"を伴って表現されていて、その"距離感"を相手との間合いに使って丁寧表現や、断定的な言い方から距離をとった控えめな意味(~だろう)になるんだそうです。 そう言われると日本語でも、「申し上げる」のように上下方向の空間的な"距離感"を丁寧表現として使ってい訳で、根っこにある感覚的な部分は同じなんでしょうね

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